人生はじめての島を走る!ということでやってきた伊豆大島。その一周は約50kmです。
岡田港から筆島見晴台までで大体半周くらい走ってきましたが、とにかく坂が多い!島だから当たり前だって?
はじめてなので知りませんでした。
とはいえ、何事も経験です。
ヒルクライマーの楽園である伊豆大島に、果敢に立ち向かっていきます!
~前回のライドはこちら~
ブログ記事をもとに、大幅な加筆修正を加えた電子書籍です。
興味のある方はご一読ください。
目次
尋常じゃない坂!坂!坂!
僕たちは、大島観光協会でもらった『東京・伊豆大島ジテンシャMAP』に載っている大島一周道路コースを反時計回りに走りはじめました。
大島観光協会のある元町を出発して、筆島見晴台までの約16kmの間に3つの坂がありました。MAPの情報がこちらです。
700m、平均斜度4.5%、標高差35m
②ややきつい坂道
2000m、平均斜度5.2%、標高差100m
③緩やかな坂道
2500m、平均斜度3.4%、標高差80m
走り慣れている人にはどうってことのない坂かもしれませんが、初心者サイクリストにはこの坂でもキツすぎる!
かなりの体力を消耗しました。
それでは、筆島見晴台から先はいったいどうなっているのか?
4700m、平均斜度7.2%、標高差340m
MAPを見て愕然としました。距離も平均斜度も、今までの坂道とは比べものにならない!
それでも”引き返す”という選択肢があるわけではないので、クロスバイクにまたがります。
走ってみたらなんてことないかも?・・・などという甘い考えは上り坂がはじまって早々に打ち砕かれ、そこには激坂という化け物が立ちはだかっていました。
開始5分も経たないうちに足が悲鳴をあげはじめる。足を着かないで一息に走り切るのは無理!
まだまだ先は長いので、意地を張らずに自転車から降りて押して歩きます。体力が回復したら、ふたたび自転車にまたがり走り出す。その繰り返しで少しずつ上っていきます。
しかし、”押して歩く”と”自転車で走る”の間隔が次第に短くなっていき、ついには逆転。あまりのキツさに、もう自転車に乗れない!
筆島見晴台から約2km地点。
振り返ってみると、走ってきた・・・いや、歩いてきた道がよく見えます。大きくS字を描いている強烈な上り坂。
さすがに眺めは格別で、新緑と海、きれいな景色を見ると少しだけ元気が湧いてきます。
炎天下の上り坂はとてもキツく、大量の汗と共にせっかく塗った日焼け止めが流れてしまう。
なんとなく『2kmを歩くと30分くらいかかる』という経験則を持っていたので、平地よりも進む速度が遅いこと、ときどき休憩していることを踏まえてこの方程式に当てはめてみると?
「この4700mの坂を上るだけで2時間くらいかかるぞ・・・」
絶望。計算しなければよかった!いったいこれは、なんの修行なんだ!
重たい荷物を背負いながら
上り坂に苦戦している原因のひとつに”重たい荷物”があります。
関東最東端ライドで往復180kmを走った僕たちはすっかり調子に乗っていて、伊豆大島は一周50kmという前情報を見て完全に余裕をぶっこいていたのです。
そんな心の油断が、持参した荷物にあらわれていました。
友人は大きな登山用のリュックサックいっぱいに荷物を詰め込んでいて、「サクっと一周して釣りをしよう」と釣り道具まで持参していたのです。
荷物の一部を僕が引き受けることになり、ふたりの荷物はおよそ軽快なサイクリングとはかけ離れた重量になっていました。
例えるなら『ドラゴンボール』の悟空とクリリンが亀仙人のもとで修業していたときに背負っていた重たい亀の甲羅。僕たちも、あの甲羅を背負って走っているようなものです。
ヒルクライムレースを走る選手は1kgでも重量を軽くして走るそうですが、僕たちはその真逆。
どこまでも己に厳しいストイックな男たちなのだ!
急な上り坂も後半に差しかかるにあたり休憩する回数も時間も増えてきましたが、ここで緊急事態が発生。持っていたドリンクの底が尽きそう。
炎天下、大量の汗をかきながら走っている僕たちにとって飲み物は冗談抜きで命の源。
辺りを見回しますが、こんな山の上に自動販売機があるはずもない。残り少ない水をチビチビと舐めるように飲むしかないのか・・・。
思い返せば『みはらし休憩所』が最後の補給スポットだったようです。反時計回りで伊豆大島一周にチャレンジする人は参考にしてください。
下ばかり見ていても仕方ないので、空を見上げてみると気持のいい青空が広がっています。
伊豆大島は車の交通量が少ないので、のびのびと走れることが唯一の救い。
たまに反対方向から気持ちよさそうに駆け下りてくるサイクリストを見て、うらやましくなります。
それにしても、ここまでのサイクリングで僕たちと同じように反時計回りで島を走っている自転車には出会っていない。なんでだろう?なにか理由があるのだろうか?
上り切った先のご褒美
ドリンクも飲み切ってしまい水分補給もままならない状況でしたが、ついに『④急な坂道』を上り切りました!
「もう…上らなくて…いい…んだ…」
達成感というよりも、上り坂から解放された安堵の気持ちの方がはるかに大きかったです。
結局自転車で走ったのは最初の1kmくらいで、あとはずっと押して歩いていました。なので走破というよりも”踏破”という感覚に近いです。
そして、坂道を上ったということは?今度は下り坂だー!
ペダルを漕がなくても前に進むって素晴らしい!さっきまでは地球の重力をうらめしく思っていましたが、坂を駆け下りているこの瞬間は感謝しかない。
道中で、日本で唯一の砂漠である『裏砂漠』を見ることができました。
裏砂漠は、国土地理院が発行する地図に唯一”砂漠”と表記された場所だそうです。つまり、日本に存在するただひとつの砂漠なのです。
言われてみれば、鳥取県にあるのは砂漠ではなく”砂丘”ですもんね。
案内看板を読んでみると、あくまで入口らしく真の裏砂漠はこの先にあるみたい。
滅多に訪れる機会のない場所なので見てみたい気持ちはあったのですが、体力的にも時間的にも諦めるしかありませんでした。
時刻は16時。出発してからすでに6時間が経っています。
真夏なのでまだまだ明るいですが、暗くなる前に一周を終えて民宿までたどり着きたいのであまりゆっくりもしていられません。先を急ぎましょう。
一難去ってまた一難からの光明?
爽快に坂道を駆け下りていましたが、そのスピードが徐々に遅くなっていく。
なんだか嫌な予感がしてきたぞ。目の錯覚じゃなければ、進行方向に上り坂が見える。近づくにつれてペダルも重くなっていく。
そうなんですよ。地味に上り坂があらわれるんです。
ここまでずっと上ってきたもんだから、この先はずっと下り坂だと思っていたのですが、実際には細かいアップダウンを繰り返す道のり。あんまり爽快じゃない。
そして、久しぶりにMAPを確認してみると見てはいけないものを発見してしまった。
4000m、平均斜度6.5%、標高差265m
うそだろ?さっき、やっとの思いで上り切った坂道と同等クラスの上り坂がまだあるのか?
これは無理だ。とても越えられそうにない。
絶望の中、うつろな目でMAPを眺めているとクネクネした道を発見。
「コレ、迂回できるんじゃない?」
MAPの青い道路が『大島一周道路』、黄色い部分が我らが宿敵『⑤急な坂道』、そしてへたくそな字で”コレ”と書いてあるのが問題のクネクネ道です。
このクネクネ道を下っていき、海沿いの道を走れば『⑤急な坂道』を回避できるか?
もう急な坂道を上る体力&気力は残っていません。
なにより深刻なのは、ドリンクがなくなってから1時間近く経っているので喉の渇きが限界に近付いているということです。
ザックリとした地図なので下り切った先の正確な道路状況はわかりませんが、少なくともキャンプ場は存在するようなので自動販売機くらい置いてあるに違いない。
わずかな希望に賭け、未知の道を駆け下りることにしました。
~数年後のお話~
このライドから約3年後、今度はロードバイクで伊豆大島を”時計回り”に一周しました。
そのとき判明した事実なのですが、ここに出てくる『⑤急な坂道』って反時計回りで走っていると上り坂ではなく下り坂だったんですよね。約4kmの爽快ダウンヒル。
MAPをよく見ると進行方向のはるか先に”ヒルクライムSTART”と書いてあり、これに気づくことができればもっと楽に一周できたと思います。
3年越しに発覚した事実に、当時を思い返してニヤリとしてしまいました。
このときのポカリの味を僕たちは忘れないだろう
難敵『⑤急な坂道』を迂回するために、海沿いにあるキャンプ場に続くクネクネ道を走るふたり。
かなりの急勾配で、強くブレーキをかけないとどんどんスピードが出てしまう。カーブが多く、路面もガタガタしているので、お世辞にも気持のいい下り坂とはいえない道のり。
クネクネ道は4kmほど続いていました。筆島見晴台から上ってきた分をすべて下ったということになりそうですね。
そして、下り切った先にあるものとは?・・・なにもない!少なくとも道は見えない。
「もしかして、行き止まり!?」
終わった。今度はあのクネクネ道を戻らなきゃいけないのか?
絶望していると、「そっちの道から抜けられるよ!」と親切なおじさんに声をかけていただきました。疲労と脱水症状で注意力が鈍っていたのか、道を見落としていたようです。
本当に助かりました。一時はどうなることかと思ったぜ。
キャンプ場には思惑通り自動販売機があり、砂漠で遭難していた冒険者よろしく1時間ぶりに水分を補給しました。
目を見開きながら500mlのポカリスエットを一息で、最後の一滴まで飲み干します。
生き返るとはまさにこのこと!このとき飲んだポカリは、今まで生きてきた中でもっともおいしい飲み物でした!
キャンプ場を通り抜けた先にも上り坂はありましたが、おそらく『⑤急な坂道』よりは楽でしょう。
海沿いの道は狭くて少し不気味です。この先はどこに続いているのだろう?そんな不安が胸をよぎりますが、進むほかありません。
そして、無事に大島一周道路に戻ってくることができました!
秋の浜トンネルを抜けた先には海を一望できる橋があり、「今、島を走っているんだな」と改めて実感することができました。
ずっと山の中を走っていましたからね。
はじめて訪れた島で、ついに見覚えのある場所にたどり着きました。そうです、僕たちが出発したスタート地点である岡田港です!
うおー!なんとか、伊豆大島を一周走り切ったぞー!
島一周、走り遂げたあとの
『伊豆大島を自転車で一周した』
計り知れない達成感の余韻にひたりながら岡田港からさらに30分くらい走り、ボロボロの汗だくになりながら宿泊先の民宿に到着しました。
ホームページの説明書きにあった通り港から離れていましたが、アットホームな感じなので居心地がよさそうです。
部屋に案内されて、重い荷物をおろします。
丸一日、炎天下の中を走っていたので体が涼しさを求めている。とりあえず、エアコンをつけようと思ったら、そうだ!お金を入れるタイプのエアコンだったんだ!
とにかく熱かったので、金に糸目を付けずたくさん100円を投入しておこう。
そして、汗だくで汚れた体をシャワーで洗い流します。
この気持ちよさは例えようがない!このために自転車で走ったといっても大げさじゃないくらい最高の気分になれます。
こういう民宿のシャワーってかなりシビアな温度調整を求められるのですが、冷水と熱湯の間をさまよいながらちょうどいい温度を模索する作業が楽しいものです。
そして、伊豆大島の繁華街である元町に繰り出して居酒屋でお疲れ様会!昼ご飯もまともに食べていなかったのもあって、食事がおいしい!お酒も進む!ここは天国か?
店員さんに島一周サイクリングの話を聞いてもらっていると、どうやら伊豆大島を一周するときによりキツいのは”反時計回り”に走るルートだということを教えてもらいました。
初心者や慣れていない人は”時計回り”に走った方がいいそうです。
なるほど。だから、対向からのサイクリストとすれ違いはしたものの、追い抜かれなかったのか。
この日は元町港の駐車場でお祭りが開かれており、島の人たちが楽しそうに盆踊りを踊っていました。僕たちも混ざって踊ります。
伊豆大島の文化にも触れられて、大満足でした。
さらば、伊豆大島!
昨日の疲れと、若干の二日酔いに悩まされながらも起床。
こちらが、お世話になった民宿です。
まさに男二人旅って感じですよね。民宿も味がある雰囲気で過ごしやすかったです。
机の上には居酒屋から帰ってきてから食べたカップラーメンやお酒が散乱していますが、出ていくときにはきちんと片付けましたよー!
2日目は岡田港まで自転車で走り、日の出浜で海水浴を楽しみました。海で泳がないとせっかく島に来たのにもったいないですもんね。
昨日の快晴とは打って変わって、薄い雲が空を覆っています。気温も若干低めなので海に入ると肌寒かったですが、なかば意地になって泳いでいました。
いよいよ大型客船の出港の時間になったので、東京まで長い船旅を楽しんでいきましょう。
ちなみに、これが伊豆大島一周サイクリングの大まかな所要時間です。
10:30~ べっこう寿司丼を食べる
12:00~ 地層台切断面を見る
13:00~ 波浮港に到着
13:40~ 見晴らし台から波浮港を一望
14:15~ 筆島を見る
16:00~ 裏砂漠を見る
16:15~ 坂道を下りキャンプ場に到着
18:00~ 民宿到着
所要時間は約8時間ですが、実際の走行時間は5時間くらいだったようですね。
クロスバイクを輪行袋に入れて、大型客船に乗りこんでいきましょう!
そして、岡田港を出発。
高速ジェット船だと外を見ることができなかったので、帰りは大型客船にして大正解でした。
「この島を一周したんだな」
「あの橋!最後、海を一望したところだ!」
汗だくで走った伊豆大島の道のりに思いをはせながら、島が少しずつ小さくなっていくのを船の甲板から眺めていました。
こういうの、なんかいいですよね。
今回のライドもキツかったです。こんなにも上り坂に苦しめられたサイクリングははじめてでしたが、振り返るとすべてがいい思い出です。
とても楽しかった!機会があればまた走りに来ようと思いました。
コメント