「島を走りたいな」
そんなふうに物思いにふけるうちに、「走りたい」から「走ろう」にランクアップし、「どこに行こうか?」と具体的に考えはじめるまでに時間はかかりませんでした。
自分のこの妙な行動力、嫌いじゃないぜ。
そんなわけで、今回は伊豆大島を走りに行くことにしました。
伊豆大島へひとり旅
伊豆大島、懐かしいですね。
クロスバイクを買ってすぐ、スポーツ自転車を趣味にしてからはじめて走った島。重い荷物を背負って走ったあの炎天下が鮮明によみがえる。
なかなかアホをやってますが、僕の大切な青春の1ページです。
さて、今回はなぜ伊豆大島をチョイスしたのか?
それはズバリ!行きやすくて、比較的安価で楽しめるからです。
僕が使えるのは3月20日(金)~21日(土)の2日間。限られた時間をできるだけ有効に使わなければなりません。
東海汽船の高速ジェット船でサクっと行けるところにしようと思って調べてみると、残念ながら時期的に伊豆大島までしか運航していない。
いっそ飛行機で飛んでいくか?八丈島だったらわずか1時間足らずで到着するのですが、いかんせん航空券がお高い。
そんなこんなでいろいろ考えた結果、行き帰りの交通の便のよさ、そして金額的なところが決め手となり、懐かしの伊豆大島を再走することになったのです。
そうと決まれば、さっそく船を予約しよう!
伊豆大島には高速ジェット船を使えば約1時間45分で到着します。伊達に”高速”を名乗っていませんね。
しかし、せっかくの自転車旅。それではなんとも味気ない。
というわけで、思い切って19日(木)の22時発の大型客船を予約。約8時間の夜の船旅を楽しみ、伊豆大島には翌朝6時に到着する予定です。
帰りは高速ジェット船でバビュンと帰ってこよう。無駄のない完璧な計画やないかい!
参考までに、行きの大型客船はいちばん安い”2等和室”を選択。いわゆる雑魚寝部屋で、お値段は4,530円。安くないですか?
帰りの高速ジェット船はお値段7,340円。
どちらも自転車は輪行袋に入れなければなりませんが、大型客船は無料で持ち込めます。ありがたいですね。高速ジェット船は別途1,000円がかかります。
そして、忘れてはいけないのが宿泊するところの予約。
安ければ安いほどありがたいのですが、3連休ということもあり安価な宿は軒並み先を越されていました。
そして、最近できたのかな?と思うほどきれいでオシャレな雰囲気の『Book Tea Bed』というゲストハウスを予約しました。
持ち物も選別して、ロードバイクの整備もバッリチ。ワクワクしながら出発の日を指折り数えて待つのでした。
乗り込め!さるびあ丸
待ちに待った出発の当日。完全なひとり旅は久しぶりなので、なんだか緊張してきた。
出船の時間に遅れたら一貫の終わりなので、仕事を定時で切り上げて駅までダッシュ!電車に飛び乗り、帰宅します。
東海汽船の船が発着する竹芝客船ターミナルまでは、高速道路を使って約1時間。
大型客船の出船は22時ですが、その前に乗車券を買うという手続きがあるので遅くとも30分以上前には着いていたいところ。
普通に行けば余裕なのですが、万が一にでも渋滞していたら厳しくなるので、なるべく早く自宅を出発しましょう。とは言え、安全運転で向かいます。
高速道路は多少混んでいるところはあったものの概ねスムーズに流れていました。そして、21時前には竹芝客船ターミナル周辺に着いていたのですが、思わぬ事態が発生。
東海汽船利用者向け割引のある駐車場があったのですが、その割引制度が廃止になっていた!
割引適用で1日2,000円だったのですが、今では1日3,960円というものすごい金額。ここには止められない!
調べてみると、割引制度が残っている駐車場があるらしいので一縷の望みをかけて行ってみることにしました…が、ここもダメ!
係の人に、「割引適用されて8,000円です」と言われて、「絶対計算間違ってるでしょ!」と心の中で叫びながら、静かに駐車場を後にしました。
ウロウロとさまよった挙句に発見した1日2,400円の駐車場で手を打ちました。2日で4,800円。必要経費でしょう。
前置きが長くなりましたが、乗船の手続きを済ませて、いざ大型客船に乗り込みます!
輪行袋に入ったロードバイクは船内に持ち込み、ひとまとめにされます。
同じサイクリストがたくさん乗っていることに、なんとなく安堵します。
それにしても、輪行袋といえばやはりオーストリッチの商品を使っている人が多いですね。
輪行についてはこちらの記事をご覧ください。
クロスバイクもロードバイクも基本的には同じなので、少しは参考になると思います。
ロードバイクを置いて身軽になったので、出船直後の海を見よう。甲板に出て景色を眺めることにしました。
すると、黒い海に飛ぶ白い鳥の群れ。尾が白いからカモメかな?群れは海面スレスレを飛行して、海中の魚を起用に捕獲していました。
お約束ですが、レインボーブリッジも撮影しておきましょう。
暗闇の中にそびえる大きな橋。絵になりますね。スポーツ自転車に乗りはじめてから、なぜか橋に魅力を感じるようになりました。
海を見ながらまったりしていると、顔にぽつぽつとかかる雨。降ってきたか。風も強い。
そうなんです。伊豆諸島の天気なのですが、出発日の19日はなんと暴風雨!明日からは晴れるみたいなのですが影響がないか心配です。
船内ではとくにやることもないので、寝床に行きましょう。
指定された2等座室に行ってみると、団体さんの中にポツンと僕がいるような配置。嫌とかではないですが、楽しくおしゃべりしているところに僕がいたらお互い気まずい。
そんなわけで、船員の方に申し出て、雑魚寝部屋よりもむしろ寝やすそうなリクライニングチェアに場所を変えてもらいました。
就寝時間になると消灯されてしまうので、明日からのライドに備えて素直に寝ることにしましょう。おやすみなさい。
島ライドは強風と共に
着いたぜ、伊豆大島!
時刻はちょうど朝6時。日差しが昇りはじめています。
船旅は終始順調で、朝方に少し揺れを感じた程度だったので船酔いをせずに済みました。
お世話になった大型客船『さるびあ丸』です。
初耳だったのですが、2代目となる現在のさるびあ丸は、2020年6月の最終運航をもって引退となるようです。
島を走る楽しさをはじめて教えてくれた伊豆大島、そこに連れてきてくれた2代目さるびあ丸に最後に乗れてよかった。
ちなみに、6月25日(木)の2代目さるびあ丸のラスト航海は、特別に時間を調整して3代目さるびあ丸と同時出航するそうです。
なんか、めちゃくちゃ熱い展開ですね!思い入れのある人だった涙腺崩壊しそう。
伊豆大島には大型客船が発着できる港が2つあります。『岡田港』と『元町港』ですが、運航状況によって当日にどちらの港から発着するかが判断されます。
今回もそうでしたが、基本的には岡田港が利用されます。
岡田港のいたるところでサイクリストが輪行を解除しはじめていますね。
前回訪れたのは2年半くらい前。そのときはバリバリの初心者だったので、輪行解除するのにものすごく手間取ったのを覚えている。
「あらよっと!」
それが今ではものの数分で済みます。我ながら成長を感じます。
『Welcom to Ohshima』
今回は快適なサイクリングをするために、自転車に括りつける荷物は極力少なくしました。
サドルバッグにはパンク修理道具一式、ボトル1本。その分、他の荷物はすべてリュックサックに詰め込んだのでめちゃくちゃ重い。
これを背負いながら走るのは難しいので、まずは元町港にある『大島観光協会』に向かいます。そこでは、1日300円で手荷物を預かってくれるのです。
岡田港から元町港までは7.1km程度なので、ゆっくり走っても30分くらいで着くでしょう。
営業時間は8時半からなので時間を持て余しそうですが、近隣にある『御神火温泉』で朝風呂を楽しむ予定です。畳の休憩室もあるようなので、ゴロゴロするのも悪くない。
意気揚々と大島観光協会に向かい走りはじめましたが、ものの数分で島の異変に気づく。
「風が強い!…なんてもんじゃない!」
もうね、雨の降っていない台風ですわ。昨夜の暴風雨が尾を引いています。風は吹き荒れていますが、それでもなんとか前に進むしかない。
やっとの思いで観光協会前に到着しましたが、海沿いなのでいっそう風が強い。
場所を確認できたので、御神火温泉に行ってひと休みしてよう!と思ったら、コロナウイルスの影響で3月中は休館しているとのこと。嘘だろ?なんてこった。
どうしよう?どこで時間をつぶそう?観光協会前に戻り、とりあえず設置されていたベンチに座ってみますが寒すぎる。
リュックサックから愛用のウルトラライトダウンを引っ張り出し、ミノムシのように丸くなって横になります。時間よ早く過ぎてくれ。
そう願いつつも辛い時間はとてもゆっくりに感じるものです。耐えれない!
ダメ元で宿泊予定のゲストハウスに電話して、チェックインまで荷物を預かってもらえないかとお願いしてみると、快くOKしてくれました!言ってみるもんだなぁ!
荷物を預けて身軽になり、いよいよ伊豆大島一周サイクリングに出発できそうです。
過去に走ったときは、ものすごい量の荷物を背負ってクロスバイクで8時間かかって一周しましたが、今回はどうだろう?
別にスピードを求めているわけではないですが、過去のライドと比較するとなにかとおもしろいので楽しみです。それでは、いざスタート!
大島一周道路をサイクリング
走りはじめましたが、即ストップ。どのくらい風が強いのか、この荒ぶる海を見ればおわかりいただけるでしょう。
凄まじい白波。飛沫が舞い上がってメガネを濡らします。
気を取り直してライド再開。海沿いを通る『サンセットパームライン』を走ります。
風の話ばかりになって申し訳ないですが、遮蔽物のないこの道路では横殴りに風が吹いている。例え話ではなく、本当に殴られているような衝撃。ぶっ倒されそうになる。
しかし、雲一つないこの晴天を見よ。景色は最高です。
車どころか人っ子一人走っていない。独占状態。サンセットパームラインという名前の通り、夕暮れ時はさぞかしきれいなんだろうな。
野田浜遊泳場というところ鐘があったので立ち止まります。
『野田浜バディズベル』
あなたの大切なバディ(意気のあった信頼できるパートナー)への想いをこの鐘の音にのせ、響かせてください。
鐘の下の石碑にはそう書かれていました。この状況ではロードバイクがバディかな?
よっしゃ!普段はこういう鐘は躊躇して鳴らさないのですが、周りに人気がまったくない今!高らかに鳴らしてやろうではありませんか!
野田浜でサンセットパームラインは終わり、細くなっている道を入ります。
ゴーゴー!
地図によると、すぐ近くに『伊豆大島灯台』があるようですね。灯台の見える風景って好きなんですよ。なんというか、”最果て”感がありません?
見たいところですが、海沿いに行くのは危険そうなので今回はスルーします。
きれいな花が咲いていました。
これはもしや、早咲きで有名な『大島桜』かな?なんの木かわかりませんでしたが、春の訪れを感じさせてくれます。
そして、ついに本日のメインロードである東京都道208号大島循環線、通称『大島一周道路』に合流しました。
知らない道を走る冒険のようなライドが楽しい!という人には物足りないかもしれませんが、一周道路は道に迷う心配がないので安心ですよね。
そして、気づけば岡田港付近に到着。Y字路を都道209号に沿って走ると岡田港に戻ってしまうので、右折して都道208号を走ります。
そのすぐ先に、大島一周道路から左に逸れていく道があるので、ここは左折することをオススメします。
その理由はこちら。
伊豆大島の絶景スポット『港の見える丘』です。
岡田港を一望することができ、海の向こうに富士山が見えるという最高の景色を堪能できます。ここは立ち寄っておきましょう!
少し走るとすぐに大島一周道路に戻ることができるのでご安心ください。
トンネルを抜けて橋を渡り、またトンネルを抜けていきます。ひとつひとつのトンネルは距離は短いですし、交通量も少ないので危険は少ないです。
泉津に入りました。ここには『泉津の切通し』と呼ばれるスポットがあるのですが、風が強いので今日は立ち寄りません。
岡田港からも近いので、明日でも見に来る時間はあるでしょう!
しばらく走っていると『都立大島公園』にやってきました。
都立大島公園は『椿園』『椿資料館』『動物園』の3つの区画に分かれていて、道路沿いからでも椿園の中を覗き込むことはできます。
椿の見ごろは2~3月ということですが、さすがに3月も終わりの方になると散りはじめています。…が、その中できれいに咲く椿も見受けられました。
白くてきれい。なんていう花だろう?こういうときのために、花の図鑑でも持ち歩くかな。花が咲き乱れる春先のライドがよりいっそう楽しくなりそう。
2020年で第65回を迎える『伊豆大島 椿まつり』の会場もここにあります。1月26日~3月22日の間で開催されているお祭り。
僕の好きなスタンプラリーを発見。3つ集めるとオリジナルポストカードをもらえるようなのでチャレンジしてみます。まずここで1つ目。
道路を挟んで向かいにある椿資料館の前にもスタンプ台があったので、早くも2つ目ゲット。
ポストカードまで開始5分で王手。残りひとつも走っているうちに見つけられるかな?そんなことを思いながら、ライドを再開します。
日本唯一の砂漠『裏砂漠』まで歩こう
大島公園までの道のりで距離は約17km、所要時間は約1時間半。ちなみに伊豆大島一周は約50kmです。
ここまでもちょこちょこしたアップダウンはありましたが、ここからが本格的な上りのはじまりでしょう。
それにしても、大島公園ってはじめて来たな。前回も一周したはずなのにこの道は通らなかったんだっけ?記憶があいまいです。
木漏れ日の中を行きます。思った通り、坂がキツくなってきた。急いではいないので、焦らず走っていきましょう。
上り坂は4kmほど続いていましたが、両側に生える木々が強風をガードしてくれたのでむしろ走りやすかったです。
少し落ち着くと見晴らしのいい景色…と同時に強い横風。コケそうになる。
「なんか見覚えのある場所だな…」
思い出した!前回走ったときは、あまりの上り坂に嫌気がさして、大島一周道路を外れてこの道を下っていったんだ。
この急坂を下った先には『海のふるさと村 キャンプ場』があり、そこからは「この先、道が続いているのか?」と不安になる海沿いの道を走りました。
もう少しがんばれば、大島公園まで長い下り坂だったのか。知らなかったとはいえ、どこまでも自分に厳しい道を選んでいたんだなぁ。
昔を思い出しながら走っていると、『裏砂漠』の入口にやってきました。
これより1.3kmほど先に、裏砂漠と呼ばれる砂漠景観が広がっています。
裏砂漠は自然公園特別保護地区として雄大な景観を保護するよう、規制で厳しく守られています。
この保護地区への車両の乗り入れは禁止されています。
国土地理院が発行する地図に、日本で唯一『砂漠』と表記されている伊豆大島の裏砂漠。
これは見るしかあるまい!
軽い気持ちで足を踏み入れましたが、想像以上に悪路!
足元の黒い砂はスコリアと呼ばれる火山岩らしいですが、ところによっては非常に柔らかく足を取られる。
いくつかの車の轍を見て、ここはまだ保護地区ではないことを思い出しますが、ここをロードバイクで走るのは不可能に近い。
振り返ると、自分の足跡がくっきり。砂場を歩いている感覚。思い切ってロードバイクにまたがってみましたが、案の定立ちゴケ。横着はするもんではありませんね。
写真ではわかりにくいですが、結構な上り坂なんですよね。勾配でいうと6~7%くらい。そのため、自転車を押して歩くのはかなりキツい。
なにもない黒い道を延々と歩いていると、はるか先になにかある!看板?行ってみよう!
これより先は、特別保護地区になります。
車両などの乗り入れは禁止です。(自動車・自動二輪車・自転車・馬など)
馬!?と思いましたが、どうやらこの先が特別保護地区、つまり裏砂漠…なのでしょうか?
とりあえず、記念撮影。なんかすごい。
正直ここまで来るのに歩いた道のりと同じような景色なのですが、”裏砂漠にたどり着いた”という達成感もあって、極上の景色に見えます。
所要時間は約20分。…ここをまた戻るのか。想像したくないので、とりあえず休憩。寝転んで空を見上げると、ものすごい幸福感。
しかし、遮蔽物のない裏砂漠。ものすごい風が強いです。寒くて、あんまりじっとしていられない!戻ろう。
帰り道はオール下り坂!ロードバイクにまたがり、注意しながら下ります。柔らかいところに入ったら終わりなので、なんとなく固そうなところを走ります。
行きは怖くて、帰りはよいよい。半分以下の時間で砂漠入口まで戻ることができました。
そして、大島一周道路を走っていると再び案内看板が現れました。嫌な予感。
「…ん?月と砂漠ライン?裏砂漠展望台?」
もしかして、裏砂漠を見るための正規ルートってこっち!?
多分そうだ。妙に過酷で観光向けじゃなかったし、なにより「ここが裏砂漠です!」的な看板がないと思ったんだ。オレは裏砂漠を文字通り”裏”から見ていたのか。
案内看板には『駐車場まで約3km、駐車場から裏砂漠展望台まで徒歩10分』と書いてありましたが、これは行かない!
もうすでに最高の裏砂漠を目にした。先を急ぎましょう!
このあたりで走行距離は約26km、伊豆大島を半周してきました。
出発から3時間が経とうとしていますが、走りはじめた時間が早かったので時計の針はようやく10時半になったところ。
あまり早く一周してしまうとやることがなくなりそうなので、残り半周はもう少しのんびり走っていこう。
伊豆大島を存分に楽しむために、次の目的地である『波浮港』に向けてペダルを回します。
~次回のライドはこちら~
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