遊びの場、近隣への移動手段、通学や通勤、買い物などで日常的に活用され、幅広い年齢層から身近な乗り物とされている自転車。
しかし、正しい交通ルールを知っている人は驚くほど少ないという実態があります。
道路を利用する場合、正しくルールを把握・実行しなければいけません。
法律で定められていることもあり、違反により”罰則”が科せられるケースもあります。知らなかったでは済まされないのです。
サイクリングに出かけるとき、改めて”道路を利用する”ということを意識してみましょう。
すると、このような疑問が頭に浮かぶのではないでしょうか?
●どんな道路があるの?
●歩道を走ってはいけない?
●どの信号機に従えばいいんだろう?
●注意すべき道ってある?
これらを解決することで、安心安全なサイクリングにつながる知識が身につきます。
僕が実際に走った体験談も交えて話をしていきますので、参考にしてください。
自転車走行の大前提
自転車で走るときの”大前提”です。
●車道の左側を走る
まずはこれを覚えましょう。
この2点を踏まえたうえで、安全走行に欠かせない基本ルールを説明していきます。
自転車は軽車両
自転車は、道路交通法上は『軽車両』に分類されます。
軽車両とは?
自転車、荷車その他、人もしくは動物の力により、または他の車両にけん引され、かつ、レールによらないで運転する車(そりおよび牛馬を含む)。
道路交通法 第2条第11項
つまり、自転車、荷車、観光名所で見かける人力車、リヤカー、お祭りの山車、馬車、そりなどが『軽車両』と定義されています。
自転車は”歩行の延長”ではなく、道路交通法では”車と同じ”扱いなのです。
そのため、車両に関する法律を守らなければいけません。
自転車安全利用5則
自転車が安全に道路を走り、交通事故などのトラブル防止を目的として政府により制定されたのが『自転車安全利用5則』です。
②交差点では信号と一時停止を守って、安全運転
③夜間はライトを点灯
④飲酒運転は禁止
⑤ヘルメットを着用
自転車に乗るときに守るルールのうち、とくに重要な5つとなります。
覚えておいて損はないので、ひとつひとつ確認していきましょう。
①車道が原則、左側を通行。歩道は例外、歩行者を優先
自転車は車と同じ扱いですから”車道”を走るのが大前提のルールです。
小さくて申し訳ありませんが、写真の中央上部、青丸の中に白い車が描かれたものが『自動車専用』の規制標識です。
その下には国土交通省の道路標識とは違いますが、自転車走行を禁じる標識がありますね。
このように『自転車専用道路』であったり、道路標識で自転車の走行が規制されていないかぎり、自転車が走れない車道はありません。
また、自転車は車と同じように”車道の左側”を走行します。
当たり前ですが”逆走”は禁止です。
車が逆走するとニュースになるものの、自転車では悲しいことに日常茶飯事。正面衝突の危険があることはもちろん、走る上での快適性も損なわれてしまいます。
歩道はその名のとおり”歩行者のための道路”なので、自転車で走ってはいけません。
例外的に”徐行”が認められているケースもありますが、それはあくまで例外。
詳しくは別項で説明します。
②交差点では信号と一時停止を守って、安全運転
当然ですが、道路を横断するときは必ず信号を守らなければいけません。
では、自転車で車道を走行している場合、どこの信号を見ればいいのか?従えばいいのか?
車と同じように”車道にある信号機”に従うのが基本的なルールです。
しかし、例外もあります。
歩行者用信号機に『歩行者・自転車専用』の標示板がある場合は、車道を走っていたとしても、歩道側に移動してそちらを優先して従わなければいけません。
これが非常にややこしく混乱するところ。
意味不明なルールで、交通安全の観点から考えてもむしろ危険だと思うのですが、とにかく現状はこのようになっています。
詳しくは別項で説明します。
赤い逆三角形に、白文字で”止まれ”と書かれた『一時停止』の道路標識があるところでは、停止線あるいは交差点の直前で止まり、左右を確認してから通行しましょう。
道路標識を無視して、止まらずに進むと『指定場所一時不停止違反』となり、車よりも重い罰則が科せられることになります。
この道路標識は、見通しが悪く交通事故のおそれがあるところに設置されています。
一時停止をしないということは、自分と他人に危害を加えてしまう可能性があるということを覚えておきましょう。
③~⑤について
道路交通法第52条で『夜間、道路を通行するときは、灯火をつけなければならない』と定められています。
必ず『前照灯(フロントライト)』を取り付けて点灯させましょう。
ピカピカと断続的に光る”点滅”は目立つものの、灯火とは認められないので要注意。
また、夜間の道路、トンネル内、濃霧の中など、50m先まで明瞭に見通せない暗い場所を走るときは、反射板または『尾灯(テールライト)』を使用しなければなりません。
こちらも同様に点滅ではなく”点灯”させることがルールです。
暗闇で光るライトは、進行方向を照らす以外にも自身の”視認性”を高めてくれる効果があり、交通事故のリスクを軽減してくれます。
法律で決まっているからではなく、身を守るためにも取り付けましょう。
お酒を飲んだら運転してはいけません。
酔っぱらっていると、普段どおりに体が動かせなかったり、正常な判断やとっさの反応ができなくなってしまいます。
フラフラして横転するかもしれません。
自分が怪我をするだけではなく、他人を巻き込んで事故を起こし、交通加害者になってしまう可能性もあります。
車と同じように『飲んだら乗るな!乗るなら飲むな!』の鉄則を守りましょう。
ヘルメットは命を守ってくれる重要な装備。
サイクリング中の事故で亡くなるケースで、致命傷となる部位の約6割が”頭部”です。
身につけることで頭部への衝撃は大きく緩和され、致死率はヘルメットをかぶらないときの”約半分”にまで軽減されます。
とくにスポーツ自転車は長距離を走ることが多いため、それだけ交通事故に絡むリスクが高くなります。また、速いスピードを出せるので怪我が重症化しやすいともいえます。
現在、ヘルメット着用は罰則のない”努力義務”になっています。
しかし、自分自身の命を守るためにも自転車に乗るときは必ずかぶるようにしましょう。
自転車が走る道路・エリア
原則『車道を左側通行』といっても、道路にはさまざまな形があります。
それでは、自転車が走るべき道路・エリアを具体的に見ていきましょう。実際にサイクリングをおこなうときのイメージを膨らませてください。
歩道のない道路
人が歩くために設けられた専用道路”歩道のない道路”です。
車道の左側に1本の白いラインが引かれていますね。この白線の外側を『路側帯』といいます。
路側帯は車道ではなく、人が歩くためのスペース。そのため、自転車を含めた車両は”走行できない部分”となっています。
このような道路を走る場合は、路側帯より右側を走らなければなりません。
場所によっては歩道や路側帯がない、つまり”歩行者が通行するためのスペース”が確保されていない道路も存在します。
そのようなところでは、歩行者も自転車も車も隔たりなく道路を利用することになります。
車にもですが、とくに歩行者には注意を払いましょう!
日本では『歩行者は右側通行』です。
正面衝突をしないように気をつけながら、あくまで交通弱者である歩行者の安全を確保して走るのが道路を利用するときのルールとなります。
歩道のある道路
今度は逆に”歩道がある道路”を見ていきます。
縁石から左が歩道、右が車道となっています。
このような車道に描かれた白い1本のラインを『車道外側線』といいます。
歩道と車道外側線の間に設けられたスペースは、路側帯ではなく”車道”として扱われるので覚えておくとよいでしょう。
ややこしいですが、道路に『歩道があるか・ないか』で、車道左側に引かれた白線とスペースの意味合いが大きく変わるのです。
車道外側線から左側は”車道”のため、自転車を含めた車両はこのスペースを走行できます。
逆に”歩道”ではないため、歩行者の通行はNGとなっています。
車道外側線から左側は、常時走行に利用されているわけではありません。
基本的に車は白線の中を走るため、前方の車を大きく避けるときなどイレギュラーな形で一時的に使われることが多いのです。
歩道ではないため人も歩きません。
整備が甘いと、砂利や小石、空き缶、釘や割れたガラス片、ゴミなどが散乱しているところ、デコボコしたところがあり、走るときは注意が必要となります。
自転車走行指導帯がある道路
「自転車は車道の左側を走りましょう!」
道路利用者に対して、このように公言してくれる標示のある道路を2種紹介します。
自転車のイラストと白い矢印で描かれているのが『自転車ナビマーク』です。
知らない人にも内容が伝わる良デザイン。
警視庁の看板には『自転車は自転車ナビマーク上を通行しましょう』と書かれています。
そして、青色で描かれている矢羽根マークを『自転車ナビライン』といいます。
灰色のアスファルトに映える色彩なので、とても目立ちますね。
基本的な意味合いは『自転車ナビマーク』と同じ。どちらか一方のみが描かれていることもあれば、一緒に使われていることもあります。
このようにマークや矢印で、自転車の走るエリアをわかりやすく示してくれているところを『自転車走行指導帯』といいます。
指導帯の存在は、物理的にはもちろん、「ここを走ればいいんだ!」という自信につながるため、精神的な部分での快適性もアップさせてくれます。
そして、冒頭にも話しましたが、自転車に乗る本人を含め、歩行者や車にも、「自転車は車道を走る乗り物なんだ」という正しい認識を浸透させる効果も期待されています。
自転車走行指導帯は、あくまで自転車が走るエリアを示す”目印”です。
自転車だけが走ってもいい『専用道路』をあらわすものではありませんので、その点は注意して利用するようにしましょう。
東京都内某所、自転車ナビマークのある道路。
3車線あり、大型トラックも走る交通量の多いところです。
このような道路でマークの上を走ろうとすると、真横を走る車に対して危険や恐怖を感じることも少なくありません。
指導帯を走ることに固執しすぎず、周囲の交通状況を踏まえた上で走行する場所を判断するのも、安全なサイクリングを楽しむテクニックのひとつです。
自転車専用通行帯(自転車レーン)
自転車が走るため、車道に設けられた専用の通行帯です。
青く色分けされ、白文字で『自転車専用』と描かれている自転車専用のレーン。
始点と終点は、看板で案内されていることもあります。
路面や看板に『専用』と明記されているのは伊達ではありません。
道路交通法第20条第2項に『車両通行帯』の記載があるとおり、「自転車はここを走りなさい。歩行者、他の車両は進入禁止です」という法的な拘束力をもっています。
車道とは、縁石のような”物理的な壁”で区切られているわけではありません。
しかし、少なくとも自転車1台が余裕で走れるスペースは確保されているため、とても快適に走れるレーンとなっています。
自転車のためのレーンですが、車の進入がゼロというわけではありません。
●緊急車両に道を譲るため幅寄せする
●人や荷物を乗降するための一時的な停車
このような場合は自転車以外の車両の進入も認められています。道路の構造的にも仕方のないところですね。
しかし、稀にですが一時的とはいえない”駐車”をしている車、自転車レーンを堂々と走る原付バイクなどを見かけることがあり、残念な気持ちになります。
違反となる形で進入する車両があると、それだけで交通事故の危険が高まりますよね。
自転車専用……とはいえ、なにが起こるかわからない。そのことを念頭において、気をつけながら走るようにしましょう。
自転車道
自転車のために独立して設けられた自転車専用の道路です。
青丸の中に白い自転車が描かれた『自転車専用』をあらわす規制標識がありますね。
路面は青くペイントされていますが、自転車専用通行帯(自転車レーン)との違いは?
道路交通法で『自転車道』は、このように定義されています。
(定義)自転車道
自転車の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
道路交通法 第2条第1項第3号の3
つまり、縁石や柵などで歩道・車道と区切られ、独立している点が最大の違いとなります。
一例ですが、このように歩道とは縁石で、車道とは柵で分けられているのが特徴。
矢印が示すとおり、もちろん左側通行です。構造的に分離しているため、歩行者にも車にも接触するおそれがありません。
自転車が走る道路としては”理想的な形”といえるでしょう。
サイクリングロード
サイクリングを楽しむため、河川敷や公園内に整備された道路です。
基本的に車は通行することができず、横断歩道や信号も設置されていないため、快適に走ることができるロードになります。
さまざまな形で整備されており、各地で特色があるのもおもしろいポイント。
群馬県『碓氷川』の横を通るサイクリングロード。自然豊かで気持ちがいい。
畑の中を抜けていく茨城県阿見町のサイクリングロード。
この素朴な感じがたまりません。
『サイクリングロード』
その名称で勘違いしがちですが、なにも”自転車専用”というわけではありません。
歩いたりジョギングをしたり、犬の散歩、ローラースケートやキックボードなど、幅広い年齢の人たちが利用し、屋外を楽しむための空間となっています。
いわゆる『歩行者自転車専用道路』のカテゴリーに含まれます。そのため当然ですが、自転車は”歩行者優先”で走らなければなりません。
場所によっては本当にたくさんの利用者がいるので、周囲に注意を払いながらスピードを出しすぎないようにしましょう。
余談ですが、国土交通省は『サイクリングロード』に明確な定義を設けていないそうです。
各自治体の裁量により整備・管理がおこなわれているのが現状。
僕がよく利用するサイクリングロードの管理事務所に電話で問い合わせしたところ、「歩行者優先。ただし、歩道のように徐行までは求めていない」との回答をもらいました。
歩道を通行するときのルール
自転車は”例外的に”歩道を通行することが認められています。
車道を走るのは原則、いわば”基本”ですが、悲しいことにその基本どおりに走ることが難しい道路も存在します。
危険を感じたときに”身を守る場所”として歩道が活躍するのです。
自転車の歩道通行にはルールがあります。しっかり覚えておかなければ、歩行者に対して新たな交通事故を起こしかねません。
どのようなルールで、どのような注意点があるのか?詳しく話していきましょう。
歩道通行が認められる3つの場合
次の3つのような場合は、例外的に歩道を通行してもいいことになっています。
②13歳未満の児童・幼児、70歳以上の高齢者、車道を走るに適さない障害を有する
③車道を走るのがとくに危険であり、歩道通行がやむを得ない
これは『道路交通法 第63条の4(普通自転車の歩道通行)』に明記されています。
詳しく解説していきましょう。
規制標識『自転車通行可』が設置されている歩道は、自転車も通行できます。
これがその標識。意識すると、普段利用している歩道でも見かけると思います。
年齢的に自転車の運転技術が未熟だったり、体力やとっさの判断力が低いと思われる児童・幼児、高齢者、障害を有する方は歩道を通行することができます。
車道を走ることが”逆に危険”とみなされてのルールですね。
また、ここに該当する人は歩道上の交通弱者である”歩行者”を傷つける可能性が極めて低いと思われることも、ひとつの根拠になります。
とてもあいまいな規定で、歩道通行が当事者の”主観による判断”にゆだねられています。
『とくに危険であり、やむを得ない場合』
これがどういった状況を指すのか?調べによると、次のような場合とありました。
●道路工事などにより走行に妨げが生じている
●違法駐車車両が連続して並び、走行困難
このような理由により、車道左側を走ることを『とくに危険』と判断すれば、自転車は例外的に歩道を通行してもよいとされています。
3つの危険はあくまで一例にすぎません。
先にも話したように危険の判断をするのは本人。本人が、「ここを走るのは危険だ……。命にかかわる」と思えば、歩道通行が認められるのです。
これは『道路交通法 第63条の4 第3項』に明記されているれっきとした法律です。
歩道に”歩行者”と、本来は車道を走るべきの”自転車”が混在する原因ともいえますね。
法律で定められる条件下であれば、あるいはサドルから降りて押して歩けば、自転車は『軽車両にも歩行者にもなれる』というある種グレーな特徴を有する乗り物です。
現在の道路インフラの中では、ルールを徹底した上でこのグレーゾーンを最大限に利活用することが、自分の身を守りながら快適に楽しめるサイクリングにつながると思います。
3つの注意点
自転車が例外的に歩道を通行するときは、必ず守らなければいけないルールがあります。
②歩道の中央から車道寄りの部分を走る
③歩行者の通行の妨げにならない
これは『道路交通法 第64条の4 第2項』に定められている法律なので、知らないでは済まされません。ぜひ覚えてください。
歩道は歩行者優先のため、安全に配慮して必ず”徐行”をしましょう。
ここでいう徐行とは、自転車が安全に走れるもっとも遅く、すぐに停止できる速度です。時速にすると約7.5km。大人の速足くらいのスピードだといわれています。
シティサイクル、いわゆる”ママチャリ”でも普通に漕いで時速15kmは出ますし、走ることに特化したロードバイクはなおさらスピードマネジメントに気をつかう必要があります。
また、速く走ることは大得意なロードバイクですが、軽量な車体やドロップハンドルの形状など、自転車の構造的に低速走行は苦手分野。
徐行してフラフラとバランスを崩さないように注意して走りましょう。
通行できるといっても、好きな場所を自由に利用していいわけではありません。
道路交通法で『歩道の中央から車道寄りの部分』を徐行する……と明記されています。
●建物や施設を出入りする歩行者を妨げないため
主な理由はこの2つ。実際の場面をイメージしてみると理解しやすいですね。
道路交通法では歩道の中で通行部分の指定はあるものの、車道のように”左側通行”を指示する内容は規定されていないのです。
右側でも左側でも”車道寄り”を徐行すれば、歩道を利用してもいいことになります。
ここが注意すべきポイント。
本人から見て右側、そして左側の歩道の車道寄りを通行すると、自転車同士が正面衝突することになりますよね?
不思議ですが、道路交通法を順守するとこのような事態が発生するのです。事故に備えて、すぐに停止できる”徐行”を意識しましょう。
自転車が歩行者の通行の妨げになるような場合は、必ず”一時停止”をしなければなりません。
再三話していますが、歩道は歩行者優先。
故意でなくても邪魔になってしまうようなときは、走りながら避けるのではなく、道路交通法に明記されているように一時停止を第一優先にしましょう。
とっさの判断で歩行者に危害を加えずに停止できる速度は、前述したとおり時速7.5km……つまり『徐行』となります。
振り出しに戻るようですが、このような理由により自転車は歩道を徐行しなければならないのです。
例外中の例外として ※内容確認中
ここまで歩道通行のルールを説明してきましたが、その根拠となる『道路交通法 第64条の4 第2項』には、同時にこのようなことも書かれています。
通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる
道路交通法 第64条の4 第2項より
一部抜粋
これまた、ややこしい。
今まで説明してきたことを一瞬にして吹き飛ばす、非常に取り扱い注意な一文ですね。
確かに、自転車旅をしていると歩行者がゼロ……というレベルではなく、「こんなところに人いるの?歩いてたら逆に怖いぞ」というような歩道もあります。
そのような場所は、歩道の状況を考慮し、常識的な範囲内で”走行”してよいということ。
個々の判断するため非常にあいまいですが、先に話したようにこういう”グレーゾーン”を大前提を理解したうえで最大限の安全に配慮し、利活用することも必要というわけですね。
自転車と歩道の歴史
『自転車は軽車両。車道の左側を走る』
このシンプルなルールが複雑になり、道路利用者からの認識が薄くなってしまった原因は、昭和45年の道路交通法改正が関係してきます。
もともとは『歩道走行は一切禁止』と決められていた自転車ですが、高度成長期の末期、日常生活で”車”の利用が一般化・大衆化する中、自転車と車の交通事故が急増してしまいます。
そこで国は、「事故のない道路インフラが整うまでは、一時的に自転車を歩道に避難させよう」という措置をとりました。
これが先に述べた、昭和45年の道路交通法改正です。
実際、道路交通事故はこれをきっかけに減少しているので一定の成果はあったようです。
しかし、「これからは車の時代だ!」という社会情勢に後押しされ、避難はもはや”一時的”とはならず、自転車はそのまま歩道に取り残されてしまい今にいたります。
近年では、健康にも環境にもよく、車であふれた道路の事故・渋滞の解消にも貢献できる”自転車”に注目が集まり、活用推進が積極的に促されています。
そのため、「自転車は車道を走るもの。歩道は例外ですよ」という”当たり前”を再び確認し合うと共に、自転車が走りやすい道路インフラが整備されつつあります。
道路を横断しよう
自転車は原則車道、例外的に歩道を利用できる柔軟性を有する乗り物です。
それでは、道路を横断するときどこの信号に従えばいいのか。
車道の信号?それとも歩道に設置してある方?
意識してみると、「どっちだろう?」となるこの問題。
車、歩行者、そして自転車が行き交うのが”道路の横断”です。しっかりと理解しておかなければ、大きな事故につながりかねません。
利用している道路の信号に従う
『利用している道路の信号に従う』
そのまんまの回答ですが、これが基本的なルールとなります。
車道を走っているときは、車道に設置されている信号で”進む・止まる”を判断してください。
逆に例外的に歩道を徐行しているとときは、歩行者用の信号です。
歩行者信号機に『歩行者・自転車専用』と書かれた標示板が設置されている場合は、車道を走っていてもこの信号に従わなければなりません。
さらに横断するときは、シマシマ模様の横断歩道の横、自転車のマークが描かれた『自転車横断帯』を徐行する必要があります。
例外だけあって、なかなかややこしいですね。
交差点は二段階右折
交差点での”右折”についてお話しましょう。
道路交通法では右折の方法として『小回り右折』と『二段階右折』の2つがあります。
小回り右折は、車やオートバイの右折をイメージしてください。信号に従い、交差点をななめに曲がる方法ですね。
自転車ではこの小回り右折は禁止されており、二段階右折をしなければなりません。
方法は以下のとおり。
②右折する先に向きを変える。進行方向が赤信号の場合はそのまま待機。
③信号が青になったら直進。
小回り右折のように1回で曲がるのではなく、交差点を”2回に分けて曲がる”イメージです。
原付バイクは片側三車線以上の大きな交差点にかぎり、このような右折が求められています。
しかし、自転車の場合は大小に関係なく、すべての交差点で『小回り右折の禁止・二段階右折』を実行しなければいけません。
車道の中では”交通弱者”にあたる自転車が、さまざまな車の往来がある交差点を安全に通行するためのルールなので徹底しましょう。
交差点内の通行について『道路交通法 第34条の5』では以下のように明記されています。
あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
道路交通法 第34条の5より
一部抜粋
前半の『左側端に寄り……』は車道走行における当然のルール。問題はそのあと。
交差点では”徐行”することを求められているのです。
衝突などの交通事故を防ぐために、どんなにスピードを出していたとしても交差点にさしかかる前にはペダルをゆるめて、すぐに止まれるよう徐行するようにしましょう。
おわりに
長丁場になりましたが、自転車の基本的な交通ルールについてお話しました。
安心安全に道路を利用するための知識です。しっかり覚えてください。
自分を守れるのは結局のところ自分だけです。
サイクリスト全員がそのように考え、法律や交通ルールをしっかり順守すれば、その恩恵は自分のみならず第三者にまで波及するでしょう。
逆走する自転車がゼロになれば、正面衝突のリスクはなくなるわけですからね?
スポーツ自転車、とくにロードバイクは道路において良くも悪くも非常に”目立つ存在”です。
「自分の走りが見られているかもしれない」
そのことを意識して、誰かのお手本になれるような走りを心がけられればいいですね!
コメント
自転車の歩道通行の例外について説明してくれていますが、間違いがあります。
例外的に歩道通行ができるのは、「自転車」ではなく「普通自転車」です。
せっかく説明してくれているのに、この説明ですと、マウンテンバイク等に乗った人などが、法律違反を犯してしまう説明になっているので、問題があると思います。
「普通自転車」であることは、警察でも追認できない特例なので、正しく説明することはハードルが高いわけすが、法令通り、「自転車は歩道通行はできない。」という説明になっていれば、それを見ても、だれも違反は起こさないと思いますので、訂正をお願いします。
コメントありがとうございます。
私自身が「自転車」と「普通自転車」の認識を正しく持てていなかったのが、誤りの原因でした。ご指摘いただき、誠にありがとうございます。
おっしゃる通り、特例の説明は非常に難しい……というか、安全走行を推奨する場合はむしろ混乱をまねくので記載不要かもしれませんね。
内容を精査したのち、早急に問題個所の修正をさせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
にしきさん、ご理解ありがとうございます。
にしきさんのように「普通自転車」の認識を持っていないのが普通。となってしまうのが、この特例のルールの曖昧さです。そして、普通〇〇◯という、名称がよくないのです。だから、世の中「自転車=普通自転車」になり、「普通」を省略する。
これが、「特例自転車」という名称なら、だいぶ違ったでしょうね。
(特定小型原動機付自転車と特例特定小型原動機付自転車の関係を調べると面白いですよ。)
最近調べていて、特例である普通自転車について、記載不要だということを悟りました。
究極は、普通自転車であることは知らなくてもよいのです。
警察も知りませんが、それで良いのです。名称ぐらいは知っているべきですが、知っていても、法令が曖昧なので、警察はそうであるとは判断できませんし・・・。
自転車に乗る限り、自転車のルールは知らない。では済まされませんが、特例である普通自転車について知らなくても、なんの問題も有りません。
ですから、その特例である普通自転車だから許されることも知らない。で良いのです。
歩道は通行できるのは、はあくまでも普通自転車なので、ルールの対象外。自転車道の通行義務もありません。
普通自転車交差点進入禁止も、禁止対象にならない(歩道に上がったら違反)。
とにかく、自分が乗っている車両は普通自転車という特例に当てはまる。と思わなければよいのです。知らないから、当てはまるとは思ってはダメです。
仮に普通自転車のことを知っていて、自分の自転車が普通自転車であると思っても、それを警察も誰も認めてくれません。そういう、わざと曖昧にしている法律なのです。
ということで、法令上、曖昧な特例である、普通自転車について、わかってきたことです。ご理解いただければと思います。
manさん、引き続きコメントありがとうございます。
大変勉強になりました。いやはや、なかなかに複雑ですね。インターネットでずいぶん調べたつもりだったのですが、manさんのコメントにあるような情報を見つけることができず、誤情報を載せる結果となってしまいました……。反省です。
普通自転車と聞くと、我々が通常目にする自転車を連想してしまいます。おっしゃるとおり”特例”自転車という名称だった方が、すんなり頭に落ち込んだと思います。
恥ずかしながら未熟なもので、またなにかございましたらご教授いただければ幸いです。
多くの人に自転車・サイクリングの楽しみを知ってもらいたい。その一点でブログを運営しておりますので、法律やルール、安全性にかかわることは今まで以上に敏感になります。ご指摘いただきありがとうございました。