伊豆諸島を制覇する!という目標を達成するために、次に白羽の矢を立てたのは火山の噴火で知られている三宅島です。
記念すべき二島目となる三宅島ですが、ぐるりと整備されている三宅一周道路は約30kmとそんなに大きな島ではないので気軽なサイクリングが楽しめそうです。
その油断が命取り!
そういわんばかりにアクシデントも発生しましたが、地球の脈動を感じるダイナミックな景色、噴火の恐ろしさ、旅ならではの出会いもあり楽しい島ライドになりました。
目次
船と自転車を予約しよう
三宅島には空路と航路、ふたつのルートから入島することができます。それぞれの特徴をザックリとですがまとめてみましょう。
●調布飛行場から小型飛行機に乗って、約50分で到着する。
●運賃は片道17,500円。往復だと割引で31,900円と3,100円お得になる。
●1日に2~3便が運航している。
●自転車を輸送する場合は予約時に申し出る必要がある。輪行袋必須。
●竹芝客船ターミナルから大型客船に乗って、約6時間半で到着する。
●運賃は再安価の2等客室で7,610円。時期により多少変動する。
●1日に22時30分~翌日5時00分の1便が運航している。
●自転車を輸送する場合は、輪行袋に入れれば無料で持ち込める。
飛行機で行くのもおもしろいかな?と思ったのですが、運賃に大きな差があったので財布に優しい航路を選択することにしました。
伊豆大島のように高速ジェット船は運航していないので、大型客船で向かいます。22時30分に出発して翌日の5時00分に到着する予定です。
実に6時間30分という長い時間を船上で過ごすことになりますが、寝ている間に到着するので、時間を持て余したり、船酔いをする心配はありません。
帰りの船は13時35分発の一択になりますが、伊豆大島で高速ジェット船に乗り継ぎができるようなので、少し値段は高くなりますがそちらを選びました。
これは繁忙期だけの特別措置なので、常時使える手段ではないようです。
諸事情により自分の自転車を持ち込むことが難しかったので、素直にレンタサイクルのお世話になることにしました。愛車で走りたいのが本音ですが、潔くあきらめます。
三宅島のレンタサイクル事情を調べてみると、宿泊客向けに自転車をレンタルしている民宿はあるそうですが、それ以外だと三宅島観光協会で貸し出しをおこなっていました。
すべてが電動自転車で、そのためか結構いいお値段。半日で1,500円、1日で2,500円です。
僕は基本的には電動自転車を好みません。辛くても苦しくても、自分の力だけで走り切りたい!という想いがあるからです。
ですが、ないものはないで仕方ない!電動自転車に乗る機会なんてめったにないので、これもいい経験だと思って楽しむことにしました。
レンタサイクルは事前予約制なので、メールと電話を巧みに操り自転車の空き状況を確認。無事に電動自転車1台を借りることに成功。余裕をもって走りたいので1日のレンタルにしました。
すべての準備がおわり、あとはワクワクしながら当日を待つのみです。存分に胸の鼓動を高鳴らせましょう!
三宅島に上陸!さっそくやらかした
伊豆大島を走ったぶりに竹芝客船ターミナルにやってきました。結構人が多いですね。輪行袋を担いでいるサイクリストもたくさんいるので、なんだか心強く感じます。
受付窓口で予約番号を伝えて、チケットを発行してもらいます。チケットは往復分をまとめて手渡されるので、なくさないように注意しましょう。
さて、いよいよ乗船開始の時間がやってきました!とはいえ、客室は指定されているので焦って乗り込む必要はありません。
船内にはレストランの他、軽食、お菓子、飲み物の自動販売機はありますが、種類も少なく値段もお高めなので飲食物は持ち込むのがオススメです。
万全に準備をしてから6時間30分の船旅を楽しむことにしましょう!
大きな船ですが、海に浮かんでいるので当然のことながら多少は揺れます。足取りに注意しながら今夜の宿に到着です。
僕が予約した2等客室の和室はこんな感じの雑魚寝部屋になっています。
顔の部分はパーテーションで仕切られているので、最低限のプライバシーは守ってくれます。よだれを垂らした寝顔を見られずに済みますね。
備え付けられているのはコンパクトな枕のみ。肌寒さを感じる人は100円でブランケットを借りることができます。
頭上にはお金を入れるタイプのロッカーがあるので、貴重品はこの中に入れておくと安心安全です。
とくにやることもないのでゴロゴロしていると、わずかに感じる船の揺れがハンモックのようで心地がいい。気分よく眠りにつくことができ、三宅島に到着するまで熟睡でした。
そして、人生初の三宅島に上陸しました!
三宅島には三池港、錆ヶ浜港、伊ヶ谷港の3つの港があり、当日の気象条件で停船する港が変わることになります。今回は海も荒れていなかったので三池港となりました。
眼前に見えるのが三宅島を象徴とする雄山ですね。
時刻は朝5時。
三池港周辺に時間をつぶせるような施設はないので、事前に泊まる宿に連絡を入れて、朝から宿泊できるアーリーチェックインを利用するのが基本でしょう。宿の人が迎えにきてくれるはずです。
僕は諸事情によりレンタカーを予約していたので、まずはお店の人と合流。乗り合わせの車でお店まで運んでもらい、手続きをしてレンタカーをゲット!
三宅島観光協会がある阿古地区の錆ヶ浜までドライブです。
この時点で三宅一周道路を3分の1くらい車で走っちゃってる。ネタバレが過ぎるぜ!
早々に到着しましたが、観光協会の営業時間は9時からなのであと3時間くらい待たなければいけません。どうしよう?なんて当日に考えるのでは遅い遅い!
事前に下調べしておいた『ホテル海楽』に向かいます。ここは朝5時30分からバイキングをやっていて、ありがたいことに宿泊客以外でも利用できるんです。
早い朝ご飯を食べながら、町が起きだすまで休憩させていただきましょう!ちなみに朝バイキングは900円でした。割と手ごろな値段なのも嬉しいところです。
小一時間かけて朝ご飯を楽しみますが、まだまだ営業開始まで時間はあります。
あまり長居するわけにもいかないので、観光協会の駐車場に車を止めて、ウロウロしたりベンチで仮眠を取りながら9時まで待ちます。ある意味では贅沢な時間の使い方かな?
そして、いよいよ待望の9時がやってきました。観光協会、営業開始です!僕と同じようにレンタサイクルで島を走る人たちが続々と押しかけていて、自然とテンションが上がっていきます。
よっしゃ!早く借りて走り出そう!
受付窓口で名前を伝えます・・・が、なにやら不穏な空気が漂っている。なんだろう?
「予約がされていません」
そんなバカな!電話でも確認したし、念のためメールでも予約の内容を送ったはず。そのような話をしながら双方がメールを見返すと衝撃の事実が発覚!
なんと、来月の今日を予約していました。
「うそ・・・だろ・・・?」
電話では間違いなく今日の日程を伝えたつもりなのですが、メールが間違えていては納得するしかない。念のためにと送ったメールがアダになるとは思いもしなかった。
そんなバカ野郎を見かねた観光協会の人が、「午後に1台戻ってくるので、13時30分からでよければ半日レンタルできますよ」と優しい提案をしてくださいました。
嘆いても仕方ないですし、自転車がなければどうしようもできないので素直にお願いしました。
こんなにも悲しい後ろ姿で立ち去るのは、後にも先にも僕ぐらいなものでしょう。なんてこった。
自分の足で掴み取った自転車
現在時刻は9時30分。13時30分までの4時間をどうやって有効に使おうか?
観光マップを見ながら立てた計画は『火山体験遊歩道』を散策してから『ふるさとの湯』で温泉につかり、船旅の疲れを癒す。これでどうよ!
しかし問題はレンタル時間。午後の部は17時までに返却しなければいけないようなので、観光しながら一周するには持ち時間が心もとない。
絶望しながらトボトボと歩いていると、一軒の民宿に目が留まります。小屋の中には何台もの自転車が置いてあるぞ。宿泊客向けに自転車をレンタルしている民宿のようです。
「・・・これ、借りれないかな?」
暗闇の中に一筋の光が差し込む。さっそく民宿に電話をして事情を説明すると、レンタルできるという返事をいただきました!地獄に仏とはこのことだ。これで、午後まで待たずに済みそうです。
10時30分に民宿に来てくださいということだったので、若干の時間がある。とりあえず、予定していた『火山体験遊歩道』まで歩いてみました。
遊歩道の入口にある案内看板には、次のようなことが書かれていました。
三宅島は火山島です。ここ約100年間では、1940年、1962年、1983年、2000年の4回の噴火が起こりました。
火山体験遊歩道は、1983年に発生した噴火により阿古集落を飲み込んだ溶岩流の上に作られた遊歩道です。
火山体験遊歩道を歩きながら、火山島三宅島の噴火の威力と溶岩流のすさまじさを体験し、また三宅島の人々と噴火の係わりを感じてみましょう。
それでは、遊歩道に足を踏み入れてみることにしましょう。
すさまじい量の溶岩が堆積されています。ここに阿古の集落があったのか。幸いなことに人的な被害は出ていなかったそうですが、溶岩が流れてくる恐怖は想像を絶します。
溶岩流に飲み込まれた阿古小学校。案内看板によると、噴火があった10月2日は阿古小中学校の合同運動会だったそうです。みんな無事に避難できたんですよね?そうであってほしい。
三宅島を訪れる上で火山と噴火の歴史については避けては通れない大切な出来事。じっくりと観ることができてよかったです。
そうこうしているうちに約束の時間になったので、民宿に行ってみると気のよさそうなお兄さんが出迎えてくれました。
レンタルしていたのは電動マウンテンバイク。電動もはじめてなら、マウンテンバイクもはじめてなので、これはこれでいい経験ができそう。
予約する日を間違えてしまったことも、こうなると結果オーライですね。
電動マウンテンバイクは普通の自転車よりもハンドル回りの操作性が複雑なようなので、近くにある広い駐車場まで移動して、乗車のレクチャーを受けることになりました。
電動モーターの電源のオンオフ、アシストパワーの切り替え、サドル高さの調節、フロントサスペンションのオンオフなど、確かにやれることが多い。
最後に坂の下まで走ってから、また駐車場まで坂を上って戻ってくるという試乗テストをおこないました。電動アシストが効いていると本当に楽ですね。力を使わずにグイグイ上れます。
無事にレクチャー終了。最後に民宿のお兄さんから、「時計回りはかなりキツいから反時計回りで走った方がいいですよ」とアドバイスをいただきました。
島ライドのセオリーには反してしまいますが、せっかくなので素直に従うことにしましょう。
波乱の幕開けとなりましたが、いよいよ三宅島一周サイクリングに出発できそうです!
「さぁ、行くぞ!」
なんて気合いを入れて観光マップを広げていると、駐車場に1台の白い軽バンがやってきて僕の近くに停車しました。
そして、車の中から島民らしきおっちゃんが登場。いったい、なんなんだ!?
おっちゃんガイドと観光名所を走る
「島を一周するのか?」
唐突に話しかけてくる島民らしきおっちゃん。動揺しながらも自転車で一周サイクリングをする旨を伝えると、なにやら島の歴史や見どころを話しはじめました。
ひとしきり話しおえると、「見たいか?」と一言。「ぜひ見たいですね!」と返答すると、「よし、ついてこい!」と言い残して颯爽と車に乗り込むおっちゃん。走り出すおっちゃん。
ん?なにこれ?ついていく感じになってるの!?
急いで自転車にまたがり、電動モーターをオン。徐行で前を走っているおっちゃんの車を追いかけます。なんだこれ!なにが起ころうとしているんだ!
混乱しながらも、この妙な状況を楽しみながらついていくとおっちゃんの車が停車しました。
ジオスポット『メガネ岩』です。
どこら辺がメガネ?昔は大きな岩のトンネルがふたつ並んでメガネのように見えたらしいのですが、あるとき台風で一方のトンネル天井が落ちてしまったそうです。
眼前に浮かぶのは大野原島という無人島。三宅島からは3つの大きな岩が突出して見えることから別名『三本岳』とも呼ばれています。
国の天然記念物『カンムリウミスズメ』の貴重な営巣地になっているそうです。
おっちゃんが説明してくれたことはジオスポット看板できちんと案内されていました。さすが島民と信頼度が増します。
説明が終わると車で走り出すおっちゃん。追走する僕。
すごい景色ですね。阿古地区の集落を飲み込んだ溶岩流が噴火の様子を教えてくれるようです。
おっちゃんは、「小学生のときは先生から阿古地区イチの”悪”なんて言われたもんだ」と笑って話してくれましたが、思い返すと阿古(アコ)と悪(アク)をかけたボケだったんだろうか?
厚い雲の下をふたたび走りはじめます。天気予報によると雨は降らなそうなのでそれだけが救い。
海岸線を走り、突き当たると先ほど歩いた火山体験遊歩道、そして阿古小学校がありました。
火山体験遊歩道で噴火以前の阿古集落の写真を見たことを伝えると、その写真が撮影された場所まで連れて行ってくれることになりました。
なんとも親切なおっちゃんである。しかし、これいつまで続くんだ?まさかこのまま一周することになるのではあるまいな?
撮影場所は高台にあるため、急な坂を上っていきます。勾配どのくらいあるんだ?かなりキツい。
そして、スタート直後から異変を感じていたのですがペダルが重い。全然、電動アシストされている感じがしません。電源はオンになっているのにどうしたんだろう?
原因究明したいところですが、おっちゃんを待たせるのも忍びないのでゼーゼーと息を切らしながら追走します。そして、ようやく到着です。
噴火前は民家が立ち並んでいた阿古集落ですが、1983年の噴火により溶岩流に襲われた集落は一夜にして焼失埋没してしまいました。
今でも少しだけ家が残っているところは、当時の消防隊が放水冷却をして溶岩の流れをせき止めたところだそうです。おっちゃんが説明してくれました。
「この先は伊ヶ谷地区だ。気をつけて走れよ」
そう言い残すと、おっちゃんは手を振りながら走り去っていきました。本当に親切なおっちゃんでした。考えてみたら噴火の生き証人だもんな。当時の話とかもっと聞いておけばよかった。
心の中で改めてお礼を言いました。
さて!ここからはひとりで島を走りはじめます。
それにしても、おっちゃんについてきたら結局はキツいと教えてもらった時計回りに走ることになっていた。まぁ、いいか!これも縁でしょうから、そのまま再スタートです。
不調な電動自転車は重すぎる
東京都道212号三宅循環線、通称・三宅一周道路をひた走ります。
三宅島一周は約30kmなので寄り道をしなければ2~3時間くらいで完走できるくらいの規模です。
それにしても、ペダルが重い。電動モーターの電源はオンになってるし、サイクルコンピューターにもデータは表示されている。問題ないはずなんだけど、なんだこれ?
しかも、ギアを軽くして踏み込もうとするとガチャガチャ!とギアが空転してしまう。これは電動自転車ならではの特徴なのか、不具合なのか、判断ができません。
一抹の不安を感じながらも、自然に囲まれた道路をノタノタと走ります。
長い上り坂を越えて、海が見えた時の感動は島ならではですね。これ、最高です。
カンカン照り期待していたのですが相変わらずの曇り空。雲自体は厚くないので、そこまで暗くないのがせめてもの救いです。
急勾配が続いたので喉が渇いた!ドリンクを持っていなかったので自動販売機を渇望するも見当たりません。早くもヘトヘト状態に陥ります。
今回のサイクリングは電動自転車だし楽々一周かな?あんまりぬるいと物足りないな!・・・なんて考えていた自分を叱ってやりたい。普通に苦戦しています。
下り坂で体力を回復していると、待望の自動販売機を発見。一息つきましょう。
あ!この自転車、ドリンクホルダーがない!これは結構不便ですが、幸いにも小さいバッグを持っていたのでその中に放り込みます。
走っていると『伊ヶ谷漁港』と書かれた青い案内看板を発見。せっかくだし見に行こうか?三宅島伊ヶ谷郵便局前を左折すると急な下り坂。戻るときが大変そうだ。
海に向かって一直線に駆け下ります。下り坂最高!
あそこが伊ヶ谷漁港ですね。東海汽船の大型船もここに停船するのかな?
満足するまで海を眺めたら、来た道を戻ります。先ほどは背中を押してくれた下り坂が一転して牙をむきます。おそろしい勾配!そして、どう考えても不調な電動自転車!
坂を上り切ると、いったん休憩して電動自転車の異常の原因を調べます。とりあえず、サイコンに注目してみると、あれ?今まで気づかなかったけど変なマークが出ている。
三角の中にビックリマークって、これ完全に警告マークでしょ!こういうときは、兎にも角にも電源オフ!そして再起動!
すると、警告マークはきれいさっぱり消え去りました。乗ってみると、背中を押されているような感覚でスイスイ進む。今までの苦労はなんだったんだ!とツッコミを入れつつ一安心ですね。
ジオスポットを巡るサイクリング
電動アシストが復活したので、上り坂もへっちゃらです。
交通量も多くないので、まったりと走ることができます。道路右側には岩壁が高くそびえ立っていてまるで山のようですね。
三宅一周道路を外れて、少し寄り道をしていきましょう。
観光スポットである『伊豆岬灯台』です。星空がきれいに見えることで有名な場所で、三宅島の観光ポスターなんかにも使われています。
三宅一周道路に合流してしばらく走ると、黒い砂浜が見えてきました。
全長2kmにもわたるブラックサンドビーチ『大久保浜』ですね。ここでは海水浴はもちろん、ダイビングやシュノーケリングが楽しめるようです。
海岸沿いには三宅島で唯一のキャンプ施設『大久保浜キャンプ場』があります。ここだけでさまざまなアクティビティを体験することができる素敵なスポットです。
一息ついたところで、三宅島一周サイクリングの相棒を紹介しましょう。
詳しいメーカーや車種はわかりませんが、電動マウンテンバイクです。
太くでゴツゴツしたオフロードタイヤなので悪路もヘッチャラなのですが、三宅一周道路は基本的に整備されているので活躍の場は少なそう。
大久保浜から細い道を抜けて、ふたたび三宅一周道路に戻ってきました。
なんだか少し雲が晴れてきたかな?幸先がいいですね。
時刻は12時30分をまわったところ。お腹が減ってきたなと走っていると、タイミングよく定食屋を発見したので立ち寄ることにしました。
大衆割烹さぶちゃんの刺身定食です。本日のお刺身はカンパチと赤イカで、どちらもめちゃくちゃ美味しかったです。島の食を堪能することができました!
出発してからここまでで約15kmを走ったので半周したことになりますね。観光スポットもまだまだあるので、心して走っていきます。
三宅島西部の神着地区にある『椎取神社』を訪れました。
地面の上に一本の丸太のようなものが置かれていますね。これ、実は椎取神社の鳥居なんです。
2000年に発生した噴火により島には大量の火山灰が降りそそぎ、大雨になると水を含んだ火山灰が斜面を流れました。これを火山泥流といい、椎取神社にも泥が押し寄せたのです。
そして、2001年3月には椎取神社は完全に埋没して、今のような形になったそうです。
本来、地面だったところはもっと地下深くにあるのか。降り注いだ火山灰、押し寄せてくる火山泥流の量を想像すると鳥肌が立ちます。
椎取神社から2kmほど進んだところに、ふたつのジオスポットを一望できる『三七山展望台』という場所がありました。
奥に見える黒い丘が『三七山』です。その正体は1962年の噴火で吹き上がった大量のスコリア(火山噴出物の一種で暗黒色の軽石のようなもの)が積み重なった噴石丘です。
そして、振り返ってみると『ひょうたん山』を眺めることができます。
1940年の噴火により海中から誕生したのが、ひょうたん山だそうです。あの小高い山があった場所は昔は海だったってこと?火山の力、噴火の力は島の形すらも変えてしまのか。
土と違い栄養も少ないでしょうに、それでも草が茂っている。植物の生命力ってものすごい。
次のジオスポット『サタドー岬』に向かったのですが、うっかり写真を撮り忘れてしまいました。
代わりと言ってはなんですが、岬からの帰り道に三宅島の力強い自然を感じることができました。
MTB本領発揮!大路池までのオフロード
海の上に黄色い船が停泊しています。
東海汽船の大型客船だ。となると、あそこは今朝降り立った三池港か!ここまできたら、三宅島一周サイクリングも終盤戦突入かな?
歩道はあまり使われていないのか、びっしりと草が生い茂っています。緑のじゅうたんの上を走るのは忍びないので車道に出よう。
これまで撮った写真を見ると、終始曇り空なのかな?と感じるかもしれませんが、実は雲の隙間からちょこちょこと太陽が顔を出し、強い日差しに照り付けられていました。
日焼け止めを塗り忘れた肌はジワジワと日焼けしていき、気がついたときには真っ赤っか。
結構な上り坂ですが、電動自転車の敵ではない。
三宅島はアップダウンが想像以上に多いです。そして、ひとつひとつの坂は長くないものの、かなり急勾配。クロスバイクやロードバイクだったら、すでにヘトヘトになっていると思う。
島のレンタサイクルが電動自転車オンリーなのはこういうわけですね。観光しに来た人が普通の自転車で気軽に走れる島ではない。
岩壁の間を走る、なんとも貴重な体験です。
三池港を超えて、三宅島空港にやってきました。サーファー像の前で記念撮影。飛行機輪行はしたことがないので、そのうち経験してみたいと思います。
そこから4kmほど走ると、伊豆諸島最大の淡水湖『大路池』の入口にたどり着きました。
後半戦、最大の見どころかもしれないのでもちろん立ち寄りましょう。
大路池までの道のりは、デコボコした砂利道が1km以上続きます。ロードバイクでしたら走行不可能なこの道も、マウンテンバイクだったら楽に走れます。
ここにきて、持て余していた性能を存分に発揮!雨でぬかるんだ道も、泥水の中もおかまいなく突っ走る。気持ちいい~!
泥除けが付いているものと思い込んで調子にのっていましたが、振り返ると影も形もなし。後輪で跳ね上げた泥が思いっきり背中を汚していました。
オフロードを疾走すると、大木が目に飛び込んできました。
噴火の神・御神火が宿ると伝えられている神木『迷子椎』です。数百年も昔から大切にされ、みだりに近づくことさえも禁じられていたそうです。
おもしろい名前ですが『この密林に迷い込んでも、この大木を目標にすれば助かる』というのが由来と書かれていました。昔は砂利道すらも整備されていなかったんでしょうね。
迷子椎を進むと、大路池に到着しました。
近すぎてよくわからないので、ここまで来る道中で撮影した引き気味の写真を載せておきますね。
大路池は、2000年以上前に水蒸気爆発によって形成された火山湖です。周囲は2.1kmで原生林に覆われていることから『小鳥の楽園』『日本一のさえずりの小径』と呼ばれています。
調べによると、大路池を一周できる遊歩道が整備されているようです。せっかくだし走ってみるか。
遊歩道ってこれ?木々が生い茂っていて、いまいち自信がありませんが進んでみよう。
大路池までの道のり以上にぬかるんだ泥道!転びそうになる。本当にここが遊歩道なのだろうか?という疑いと共に走っていると、道が二手に分かれている。うそだろ?
薄暗いし、人気はないし、急に怖くなり来た道を引き返します。ここで迷子になったら…いや、もうそれは遭難か?迷子椎をめざしても助かる気がしない!
大路池からのラストスパート!海岸線、海を見ながら走ります。
出発して、どれくらいの距離を走ったのだろうか?スタートがバタバタしていたので、前回の走行距離がリセットされていない状態で走りはじめてしまった。
島を走っている!という感じがして、こういう景色大好きです。
まったりとサイクリングを楽しんでいると、島の中でも比較的栄えている阿古地区に入りました。景色だけではなく民家や商店が並ぶさまを見ていると、独特の文化があることを感じます。
そして、なにやら見覚えのある建物があらわれました。
朝食バイキングをいただいたホテル海楽です。その節はお世話になりました。
ゴールまであと一息!三宅島観光協会に立ち寄ってから、朝、絶望しながら歩いた道を今度は自転車で軽快に走ります。
そして、自転車をレンタルしてくれた民宿に無事到着!三宅島一周サイクリング、感想です!
おわりに
人生初の三宅島上陸、そして一周サイクリング、多少のアクシデントはありましたがとても楽しく走ることができました。
走行距離は約35km、所要時間は約5時間でした。おっちゃんとの雑談、観光スポットへの立ち寄り、昼休憩などを含めた時間ですが参考にしてください。
体の疲れはどうか?電動マウンテンバイクの性能は本当にすごいですね。電動モーターが復活してからは、どんな急勾配な坂があっても疲れずに上ることができました。
しかし、それ故に物足りない!
なるべく楽にサイクリングを楽しみたい人にはオススメですが、僕のように全身の疲労と共に肌で島を感じたい人は電動ではない自転車の方がいいでしょう。
大変だった思い出の方が記憶に残りますしね。次回はロードバイクを持参して、周辺の島をハシゴするのもおもしろいかもしれません。
三宅一周道路は交通量も少ないですし、しっかりと整備されているのでとても走りやすい島だと感じました。
しかし、ロードバイク持参のガチサイクリストはいませんでした。交通の便がいい伊豆大島、伊豆諸島でもとくに人気のある八丈島あたりに流れているのかな?
三宅島は勾配のある坂が多いものの、30数kmと距離は短いので、そういう意味では前述の島々の方が走りがいがあるかもしれません。
しかし、三宅島の魅力は火山が息づく豊かな自然だと思っています。
溶岩流やスコリア丘など、ここでしか見ることのできない景色がありますので、世界有数の火山国といわれている日本に生きる者にとって、学ぶべきことがたくさんあると感じました。
帰りの大型客船から眺める三宅島です。
自転車で一周走った島を眺めながら、船に乗っていると数々の思い出がよみがえり少しだけしんみりしてしまいますが、次はどこを走ろうか?すでにそんなことを考える旅の帰路でした。
コメント
三宅島ライドお疲れ様でした!
毎度トラブルに愛されすぎてなんともはやですが、無事サイクリングできたようで何よりです。
冷えた溶岩流の迫力、自然に囲まれた道と、島の風景が実に素晴しい。
自分もこんな遠出ライド行きたいなーと思いつつ、今年はなんだかんだ近場ばかり走ってますので、まずは伊豆大島あたりから行ってみたいところですね。
電動MTB、これ…ミヤタ自転車のリッジランナーですね…
たかが民宿、と言ってはアレですが、そんな客用レンタサイクルに出す自転車じゃないぞこれ!?(税込み約40万円)
島だから盗難の心配があまりないってことなんだろうか、大らかな感じですね。
とはいえ島内を走るにはオーバースペックすぎる気がしますがw 貴重な体験でしたね!
次のトラブル、もとい遠出ライドも楽しみにしてます!
暑すぎる夏ももうすぐ終わり。涼しくなったらまたガンガン走ってください!
なまこさん、ありがとうございます!
頭を使って計画している風で、詰めが甘いのが原因でしょう!とりあえず、無事に走れたので一安心でした。
三宅島の自然は本当に圧倒されます。近場のサイクリングも楽しいですが、たまには海を渡って島を走ると新鮮な感動がありますよ。
伊豆大島の方が交通の便がいいので行きやすいかもですね。ぜひ、走った感想聞かせてください!
電動MTBの情報ありがとうございます。調べてみたらまさにその自転車でした。そんなに高価な自転車だとはつゆ知らず、楽ちんだなー!なんて思いながら乗り回していました。
そういえば、鍵のレンタルはありませんでしたね。沖縄の与論島を走ったときも感じましたが、小さい島は本当に大らかで素敵です。
貴重な体験をしていたことに気がつけてよかった!
次はどこに行きましょうかね~!とりあえず、現段階で計画しているのは東京湾一周です。
僕は割と汗かいて走るのが嫌いではないので、暑すぎる夏にもうひとっ走りしてきます!応援、ありがとうございます!