今回、ご紹介するのはこちらの作品です。
『茄子 アンダルシアの夏』
2003年7月に公開されたアニメ映画で、上映時間は47分。一般的な映画の半分程度ですが、その47分間は濃密そのもの。
それでは早速、紹介していきます!
どんな話?大まかなあらすじ
舞台はスペイン。
毎年9月におこなわれる自転車のプロロードレース『ブエルタ・ア・エスパーニャ』の1ステージでのお話。
主人公『ペペ・ベネンヘリ』はビール会社がスポンサーとなっているチーム・パオパオビールのアシストとして、夏のアンダルシアを走っていた。
レース中盤、エースを勝たせるためにペペは集団から飛び出す。そのアタックに反応したのは10人。そして、逃げ集団が形成される。
チームの勝利のためには、この逃げ集団をさらに”ふるい”にかけなければならないと、再度のアタックを指示されるペペ。
しかし、危険な選手とみなされなかったペペについていく者はおらず、単独での逃げという形になってしまう。
チーム監督から集団と合流するように指示が出るが、後続する集団にアクシデント発生。チームのエースも巻き込まれて落車、リタイアに陥る。
無線で状況を知り動揺するペペに、監督から新たな指示が飛ぶ。
「いいか、お前の仕事を言う。…勝利だ」
しがらみ、過去、さまざまな想いを胸に抱きながら、勝利のためにペペは生まれ故郷・アンダルシアの夏を走る。
ペペを巡る数々のエピソード
いかがでしょうか?
ストーリーの本筋だけでも熱い展開なのですが、ここに主人公ペペを巡るさまざまなエピソードが加わることで、とても見応えのあるロードレース映画となっています。
どんなエピソードがあるのか、さわりだけご紹介。
ネタバレというほどでもないですが、完全に情報ゼロで映画を観たい!という方は読み飛ばしを推奨します。
①解雇の危機
「今年は勝ちがない。スポンサー様が降りたがっている」
ペペの所属しているチーム・パオパオビールは、スポンサーが降りたがっている崖っぷちのチーム。
集団から飛び出すときも、他の選手からヤジが飛びます。
「この暑いなか行くのかよ?」「やめとけ」「死ぬぞ」
「行かねぇことには、次がねぇんだ」
指示通り一生懸命走るペペですが、スポンサー様は勝てない原因がアシストのペペにあるのではないか?と監督に詰め寄ります。
「アイツのせいで勝てんのではないのか?アイツをクビにしろ」
自分の解雇話を偶然聞いてしまうペペですが、それでもプロとして勝利を信じて走ります。
②生まれ故郷への想い
ペペが自分の解雇の話を聞いてしまったところ。
「クビかぁ…。どっかひろってくれんと浪人だ。でも、地元は嫌だなぁ…」
その直後、ペペの”プロ”としての持論を心の中でつぶやくところ。
「監督、あんたに教えてやりてぇ。プロってのは仕事以上のことをやっちまうやつだって。そうでなきゃ、そうでなくちゃ、生まれた土地から出ていけないだろ」
作中のセリフを紹介しましたが、ペペは生まれ故郷に対して複雑な想いを抱いています。
この想いというのは、”嫌い”という単純なものではありません。では、どんなものなのか?それを知るためには、ぜひ映画を観ていただきたいと思います。
③兄、そして元恋人との過去
「おまえ、地元だからって色気だすなよな。いいか?今日はオレの日だ」
逃げ集団の先頭を走るペペにエース・ギルモアが言います。
「ああ、大丈夫だ。オレの村の前を通るがな、うちに限って言えば今日はオレの日じゃねぇ。今日はアニキの日だ」
ペペが地元を走る日、それは偶然にも兄・アンヘルの結婚式の日でした。
兄、そして元恋人との過去。これは『茄子 アンダルシアの夏』にとって、もっとも重要なエピソードと言っても過言ではありません!
なので、ここではこれ以上の紹介を控えたいと思います。
エピソードを3点ご紹介させていただきました。
すべてがペペを中心につながって、『茄子 アンダルシアの夏』という作品を形作っています。
もちろん、これは物語の中でも特に大きなエピソード。僕が感じ取れなかったエピソードやテーマがまだまだ隠されているかもしれませんね!
魅力的な3つのポイント
とても魅力的な作品ですが、僕が『こんなところが好き!』と思うポイントを3つほど紹介させていただきます。
①ロードレースが熱い
ストーリーの本筋であるロードレースがとても熱いんです!
あらすじでも書きましたが、主人公・ペペが故郷のステージを”ひとり逃げ”というシチュエーションは観ていて燃えます。
そして、作中のレース解説者からは『追いつかれるのは時間の問題』と厳しいながらも理にかなった解説がされるので、余計に「ペペ!がんばれ!」と応援したくなります。
最後の最後まで手に汗握るレースを楽しむことができました。
②登場人物が魅力的
この映画に出てくる登場人物、全員が魅力的なんですよね。キャラクター同士の掛け合いも小気味よく、聞いていて暖かい気持ちになります。
47分間に凝縮されているためか、いい意味で”無駄なやり取り”が一切なく、全員の一言一言すべてが印象的できちんと意味を持っている感じ。
そして、なんと言っても主人公『ペペ・ベネンヘリ』がとにかくカッコいい!
しがらみの中、それでも自分の勝利を信じてペダルを回す姿には、心を打たれるものがありました。
作中における、ペペの成長…とはちょっと違うな。アンダルシアの夏を走り切ったことで踏みだせたペペの一歩を是非多くの人に観てほしい!
③自転車の魅力が伝わってくる
ロードバイクがカッコいい!…と言うのはもちろんなんですが、もっと根源的な自転車の魅力がこの映画から伝わってきました。
作中に出てくるペペのセリフ。
「オレは、遠くに行きたいんだ」
そして、『茄子 アンダルシアの夏』のキャッチフレーズ。
『遠くへ行きたい』
物語の中から、『自転車は遠くに行ける乗り物なんだ』ということが伝わってきました。
物理的な距離のことではなく、なにかから逃げ出したかったり、解放されたかったり、助けを求めているとき、自転車はそんな心を”ここではないどこか”に連れて行ってくれる。
そういう力があるんだよ…というメッセージを感じたような気がします。
自転車乗りの人も、そうでない人も、心当たりがあるのでは?こういう共感ポイントもこの作品の大きな魅力だと思っています。
おわりに
つらつらと書き綴ってきましたが、きちんと『茄子 アンダルシアの夏』の紹介になっているでしょうか?
僕はこの映画が大好きです!
47分という短い時間ですが、その内容は本当に濃密で、最初から最後まですべて見どころ!こう言うと観るのが疲れそうですが、緊張の展開が続くわけではないのでご安心を。
4~5回は繰り返し観ていますが、毎回最後まで楽しんでいます。
ちなみに、なにを隠そうこの映画がキッカケで、ロードバイクを買うことを決心しました。
僕をロードバイクの道に引き入れた張本人というわけです。
多くの人に観てほしいと思い、今回この紹介記事を書いてみました。
ロードバイクに乗っている人、興味がある人、そうでない人、是非この映画を楽しんでみてください!
観終わったあと、きっと素敵な気持ちになりますよ。
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