アニメ映画『茄子 スーツケースの渡り鳥』の話

にしき 自転車を題材にしたメディア

ひさしぶりのメディア紹介!というわけで、今回取り上げるのはこちらの作品です。

 

『茄子 スーツケースの渡り鳥』

 

僕をロードバイクの世界にいざなった『茄子 アンダルシアの夏』の続編にあたる作品です。

この『スーツケースの渡り鳥』は映画館で上映されたわけではなく、2007年10月に発売されたOVA作品。

わずか55分の中に、プロロードレーサーとしての苦悩、葛藤、仲間、そして勝利という濃密なドラマが詰め込まれています。

それでは紹介していきましょう!

 

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どんな話?大まかなあらすじ

舞台は日本。

毎年10月におこなわれている、アジアにおける最大のロードレース『ジャパンカップサイクルロードレース』でのお話です。

 

伝説的な名選手『マルコ・ロンダニーニ』の自殺というショッキングな出来事から物語ははじまります。

チーム・パオパオビールのエースアシストである主人公のペペ、そしてチームのエースであるチョッチは葬儀に行きますが、参列せずに帰ってしまいます。

同郷で共に練習に励んだ憧れの存在であるマルコの死は、チョッチに複雑な想いを抱かせました。そして、”プロとして自転車で走ること”に、大きな波紋を投げかけます。

「愛する家族と一緒に暮らすとか、食いたいサラミをたらふく食えるとか、コーヒーもおかわりできるとか、風邪をひいたら風邪薬…そういう人間らしい暮らし、どう思う?」

 

そして、飛行機に乗り日本へ渡ります。

ジャパンカップに乗り込むチーム・パオパオビールの一同は、日本でのレースに備えてコースを試走したり、観光でリフレッシュをはかります。

 

しかし、マルコの死を”自分の未来”と重ねずにはいられないチョッチはナーバスになります。

「オレ、来年で辞めようと思ってさ。親父が会社を継がないかって」

「家族にも会えず、あれも食えずこれも食えず、あくせくポイントポイント…」

 

ブエルタ・ア・エスパーニャの1ステージ、故郷アンダルシアを走り勝利をおさめてプロとして走ることの確かな意味を見出したペペ。

「ポイントじゃねぇ!オレは勝つために走ってるんだ。勝つために生きてる」

 

マルコの自殺で、プロとして走ることに疑問を抱くチョッチ。

「よく考えろ!生きるために金がいるんであって、誰も金のために生きてはねぇだろ!」

「オレは人生のために生きる」

 

ジャパンカップ当日、大雨の降る中でレースに挑むチーム・パオパオビール。

残り4周で先頭の逃げグループを吸収した集団の中から、すかさずペペとかつてのチームメイトであるギルモアがカウンターアタックを仕掛けます。

そして、形成される10人の逃げグループ。

 

一流になり切れない自分、マルコの死、ロードレーサーとしての人生、さまざまな悩みを抱えながら、迷いながらもペダルを回すチョッチ。それをアシストするペペ。

「チョッチに伝えてくれ。今日はオレたちの日だ!」

 

勝利だけを見据えてペダルを回すペペ。チーム・パオパオビールの行く末やいかに…!

 

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魅力的な3つのポイント

あらすじだけ見ると、「なんだか重そうな話だなぁ…」という印象を受けるかもしれませんが、それは誤解です。

前作と同様に『スーツケースの渡り鳥』も、”プロとして走ることの厳しさ”というテーマが根底にあると感じましたが、作中の雰囲気はとても明るいものです。

 

それではお次に、僕が『スーツケースの渡り鳥』を観て魅力的に感じたポイントをご紹介!

登場人物のセリフを少しだけ引用させていただきますので、「これから観るから前情報ゼロで楽しみたい!」という人は、映画を観終わってから戻ってきてください。

それでは、いってみましょう!

 

①仲間とのやり取りがおもしろい

前作は主人公・ペペによる”ひとり逃げ”の単独行を描いた作品でしたが、『スーツケースの渡り鳥』ではチーム・パオパオビール一丸となっての戦いがメインとなっています。

チームメイトとの会話や談笑、観光を通じての交流、そして助け合いを作品の中で見ることができますが、そのほとんどの場面が良い意味で劇的ではありません。

何気ない日常のワンシーンという形で描かれているので、変に肩の力を入れずに楽しむことができます。

 

作中ではさまざまな場面で、仲間とのやり取りが描写されています。

飛行機、ロードバイクで車道を走行中、選手紹介直前の控室、宇都宮市を観光しながら、そしてレース最中…などなど。

それぞれのシーンは短いながらも、笑えたり、考えさせられたり、切なかったり、心に響くやり取りが多いので記憶に残ることは間違いなしです。

 

熱い仲間の友情!とはちょっと違うかな?

プロロードレーサーとして、チームを介して仲間を信頼し、”勝利”という最大目標のために力を合わせて戦う、まさに”プロ”同士のやり取り…という感じなのかな?

熱い部分もあり、クールな部分もあり、とてもうまいバランスでの関係が成り立っていて、見てみて気持ちがいい。

 

なかなか文章にするのが難しい。

とにかく!キャラクター同士のやり取りがとても素敵!ということだけ頭に入れておいてください。僕の言わんとしていることは、観れば伝わると思います!

 

②登場人物が魅力的

登場するキャラクターたちがみんな素晴らしい!前作より登場人物は増えましたが、全員が個性的でとても魅力があります。

 

チーム・パオパオビールを主軸に『ペペ』と『チョッチ』のダブル主人公といった形式の今作。いや、どちらかといえば重きを置いているのはチョッチの方でしょう。

「勝つヤツにはオーラがあるよ。凄みがな」

「ザンコーニにも、ギルモアにもある。オレにはない」

 

かねてから一流になり切れない自分自身と戦い、もがいてきたチョッチ。憧れの存在であるマルコの死をキッカケに、ロードレーサーとしての人生に疑問を持ちはじめます。

苦悩しながらもレースはスタートし、チームの命運を任せられることになります。

(チョッチ、なにやってんだ。ボトルを捨てろ。ここが地獄の入り口だ。踏ん張れ)

いちばんツラいときに、語りかけてくるのはマルコの幻影。

「だめだ、僕はマルコじゃないんだ!」

(…じゃあ、やめちまうか。その方が楽だぜ?)

マルコの幻影は微笑みながら、優しい言葉を投げかけてきます。走りながら葛藤し続けたチョッチが出した答えとは?見どころです。

 

こんな具合に、とても素敵なキャラクターばかり揃った作品です。

チョッチはとても人間味があっていいキャラしています。

ペペは普段はお調子者の二枚目キャラですが、レースがはじまるとカッコよさ爆発!個人的にはメガネをかけているので親近感がわきます。

チームメイトや監督、ライバルチームに所属しているかつてのチームメイト・ギルモア、朴念仁と呼ばれている変わり者・ザンコーニなど、全員が個性豊かで魅力的です。

 

そして、チームをサポートしてくれる明るくて元気な今作のヒロインである豊城ひかる。ロードレースが大好きな小学生くらいの男の子。

この2人の存在も作品全体の明るさを底上げしてくれていて、とてもいい感じです。

 

観れば、必ずひとりは気に入るキャラクターが見つかることでしょう!

 

③ロードレースが熱い

レースが本当に熱い!この一言に尽きます!

ジャパンカップサイクルロードレース、残り4周で集団が先頭を走る3人の逃げグループを吸収したところからはじまります。

吸収すると同時にカウンターアタックを決めるペペとギルモア、続くチョッチ。そして形成される10人の逃げ集団。ここからのレース展開がドラマチックで熱いんです!

 

作品の根幹となる重要な部分なので詳細は語りませんが、大雨の降る中、勝利をめざしてチーム一丸となって走る姿勢がカッコいい。

前作の”ひとり逃げ”展開もロマンがありましたが、『スーツケースの渡り鳥』ではチーム戦をうまく描いていると思います。

あまり深くは映されていないのが残念ですが、ペペとチョッチを逃げグループに追いつかせるために集団をコントロールしていた(であろう)チームメイト2人。

ペペのアシストとしての活躍、チョッチのラストスプリント。

 

上映時間55分のうち、約半分はレースなのでとても見応えがあります。

ロードバイクに乗りたくなること間違いなし!本当に必見です。

 

もっと語りたいことはたくさんあるのですが、止まらなくなりそうなのでこの辺りで落ち着いておきましょう。

拙い紹介文ですが、『スーツケースの渡り鳥』の魅力を少しでもお伝えできれば嬉しいです。

 

ジャパンカップサイクルロードレース

最後に少しだけ『ジャパンカップサイクルロードレース』について触れておきましょう。

ジャパンカップサイクルロードレース

アジアにおける最大レースのひとつであり、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアといった、世界の第一線で活躍する選手たちの本気の勝負を間近で見ることができる日本で唯一の大会です。

現在、ワンデイ・レースとしてはアジアで唯一、最上位カテゴリーのオーランクレースとなっており、UCI(国際自転車競技連合)からは、アジアにおける自転車競技発展の牽引役として認められています。

(公式ホームページより抜粋)

 

ジャパンカップの舞台は栃木県宇都宮市。近年、自転車の聖地として『輪都・宇都宮』を発信していこうという取り組みが進められているそうです。

レース内容は、1周10.3kmの宇都宮市森林公園周回コースを14周!総距離144.2km!

ものスゴい距離ですね。ペペたちも100km以上走ったうえでのあのレースだったのかと思うと感慨深いものがあります。

 

標高差185kmの古賀志林道つづら折りの上り坂はジャパンカップの名物になっています。

 

さて、実は僕も2018年のジャパンカップは宇都宮まで行って観戦していたんです。

はじめてのレース観戦が『スーツケースの渡り鳥』の舞台というのも、なにか縁を感じてしまいますね。

いわゆる”聖地巡礼”をするつもりはなかったのですが、作中に出てきたところにたまたま訪れたので少しだけご紹介。

 

◆日光二荒山神社

日光二荒山神社

チーム・パオパオビールが日本に到着して最初に走っていたところ、それがこの二荒山神社の真ん前の道路です。

作中でもバッチリ写っています。正面から撮影すれば、もっとそれらしく撮れたかな。見たときは『スーツケースの渡り鳥』を思い出して感動しました。

きちんと参拝もさせていただきました。御朱印帳を家に忘れたのが残念でならない。

 

◆オリオン通り

宇都宮のオリオン通り

ひかるに案内されて訪れた漬け物屋さんがある商店街。

ペペとチームメイト2人、そしてザンコーニも名物である”茄子のたまり漬け”を食べていたようです。次に訪れたらその漬け物屋さんを探してみよう。

 

◆古賀志林道つづら折り

古賀志林道つづら折り

距離は短いものの急勾配で知られる古賀志林道のつづら折り。徒歩で上りましたが、ここを自転車で走るとか…本気?と絶句したのを覚えています。

古賀志林道つづら折り

地面にはチョークで応援のメッセージが多数描かれていました。

前作『アンダルシアの夏』でも、地面に”VENGA PEPE”と描かれていましたよね。ロードレース特有の応援方法。おもしろいです。

古賀志林道つづら折り

木々の間から見えるつづら折り。ここを14回も上るの?考えられない。

 

少しだけですが、『スーツケースの渡り鳥』の舞台を紹介させていただきました。ジャパンカップについては、次回観戦に行ったときにまた詳しくお話しますね。

ふと思った。

ペペたちの気持ちをより深く理解するために、宇都宮市森林公園周回コースを14周走るチャレンジ…というのはどうだろう?

丸1日…いや、それ以上かけても走れなそうですね。

 

おわりに

ロードバイクに乗っている人なら一見の価値あり!とても素敵なオススメ作品です。

もちろんロードバイクやレースについて、まったく知識がなくても楽しめますし、この作品を通じてロードバイクの世界に興味を持つ可能性は十分にあると思います。

それくらいの魅力を秘めている作品です。

 

舞台が宇都宮市ということで、馴染みやすいのもポイントが高いところ。

この作品を観て、ロードレースに興味をもったらまずは宇都宮のジャパンカップを観戦してみましょう!

作品で描かれている世界が、そのまんま宇都宮にあります。ロードバイクにまたがって、チーム・パオパオビールの軌跡をなぞるのもまた一興です。

 

続編出ないかなぁ…と期待しているのですが、『アンダルシアの夏』『スーツケースの渡り鳥』と2作続けて最高だっただけにハードルは相当上がっています。

下手に続編なんて出ない方がいいのかな?でも、ペペやチョッチのその後も気になる・・・。とても複雑な心境です。

 

とても素晴らしい作品なので、ぜひ観てみてください!

長文でしたが、読んでいただきありがとうございました。

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