本州最北端をめざす自転車旅、2日目はいよいよ青森県に入ります。
岩手県盛岡市から青森県上北郡東北町まで145kmと、今回の旅で最長距離を走る重要な日。気合いを入れなければいけません。
目覚ましが鳴り響き、朝5時に目を覚まします。布団の中に入った状態ではありますが、窓の外から聞こえてくる音だけで強い雨が降っていることがわかりました。
「今日も雨天ライドか・・・」
出発を遅らせようとも考えましたが、天気予報ではすぐに止む気配もないので身支度を整えて潔く出発しよう。
宿の人に見送られながら、大間崎へと近づく第一歩を漕ぎはじめます。
~前回のライドはこちら~
大雨の中をびしょ濡れライド
時刻は6時20分。宿を出発すると、乾いていた服や荷物が一瞬でびしょ濡れになる!
ものすごい豪雨。このレベルの雨天ライドは今まで経験がないので、注意して走ろう。
御所湖に架かる繋大橋を渡ります。
普段はきれいな御所湖も、今日に限ってはあらぶっておられる。
御所湖を一周すると約15kmなので、景色を楽しみながらサイクリングするのにはもってこい。また機会があれば天気のいい日に走りたいものです。
岩手県道258号・繋温泉線を進みます。
雨の中はもっと走りにくいかと思っていましたが、想像よりは走りやすい。朝早いということもあって交通量が少ないのもいい感じ。
なんだか”非日常”を感じられてこれはこれでアリか?なんて考えていると、どんどん雨脚が強くなっていきます。ごめんなさい、今の発言取り消します。
道中に公園らしき施設を発見。その駐車場にトイレがあったので雨宿りを兼ねて少し休憩します。
雨が降っていると防水ではないiPhoneを気軽に見ることができないのが厄介。ディスプレイに雨粒が付くと操作もおぼつかなくなるので、屋根があるところでのみ使用可能という感じ。
走行ルートは頭に叩き込んでありますが、「道、合ってる?」なんて不安になるときもあるので、小まめに地図を確認できないのは不便です。
肝心のiPhoneはトップチューブバッグの中に入れているのですが、浸水したらアウト。補給食を上に積んでバッグ内でバリケードを築きます。これで大丈夫かな?
後日談になりますが、今回の自転車旅で使用したのは『Fuel Tank(フュエルタンク)Lサイズ』というトップチューブバッグなんですが、とても高い防水性を発揮してくれて助かりました。
結論から言うと、大雨の中を数時間走っていたのですがまったく浸水しませんでした。今後も長くお世話になりそうなポテンシャルを秘めたバッグです。素晴らしい!
御所湖沿いの道を抜けると、大きな道路にぶつかります。横断歩道を渡った先にファミリーマートがあったので雨宿りしながら地図を表示。どうやら国道46号みたいです。
国道46号から国道4号に合流するルートがわかりやすくてベストな気がしますが、道路が濡れている中で交通量の多い市街地は走りたくない。
調べていると、有名な小岩井農場を通って国道4号まで抜けられる道を発見しました。山間部を抜ける道のようなので走りやすそう。よっしゃ、ここを行こう!
意を決して再出発しようとしたときに、右手のグローブを紛失したことに気がつきます。多分さっき休憩した公園のトイレだ。iPhoneを操作するのに外した記憶がよみがえる。
スポーツ自転車に乗りはじめてからずっと愛用していたグローブなので名残惜しいですが、ここまで来て引き返すわけにもいかない!
残念ですが諦めよう。ここからの自転車旅は『地獄先生ぬ~べ~』スタイルで走るぜ!
小岩井農場を越えて国道4号へ
小岩井農場に続く県道219号は思った通りの道で、車はほとんど走っておらず悠々自適にサイクリングを楽しめます。
屋根のある施設がほとんどないので、見かけたら積極的に休憩。すぐに濡れるので意味がないように思いますが、衣類を絞ったり、体を拭いたり、コンディションをなるべく万全に整えます。
時期的に寒くはないのでせめてもの救い。これで気温が低かったらただの修行になってしまう。
来年の干支、牛を発見。
一心不乱に草を食べているようです。
そして、小岩井農場に到着しました。以前、普通の旅行で訪れたことがあるこの場所にまさか自転車で来るとは思わなかった。人生ってなにがあるかわからんもんだね!
出発から1時間弱、時刻は7時15分。営業時間中であれば立ち寄りたかったのですが、今回は残念ながら素通りして先を急ぎます。
勾配はキツくないのですが上り坂になっていて、雨水が川のようになっています。
水しぶきを巻き上げながら、川の流れを逆走します。普段なら絶対にロードバイクで走りたくない状況ですが自転車旅なら仕方ないさ。こういうこともある。
道が分岐するたびに、「どっちに行けばいいんだ?」と迷いますが、気軽に地図を確認できないためなんとなくの方向感覚で進みます。ここら辺が僕の適当なところですね。
こういうところはマジで天国!雨に濡れないって素晴らしい!
久しぶりに地図でルートを確認しましたが、問題なく国道4号に近づいているようで一安心。
歩いているおばあちゃんから声援を受けながら、ついに国道4号に合流できました!
案内看板には青森の文字。目的を果たしてもいないのに、なんだか無性に感動してしまう。
国道4号は交通量が多いのですが、路側帯も広いので安心して走れます。
コンビニ発見!休憩!びしょ濡れのまま店内に入るわけにはいかなかったので、リュックサックからタオルを取り出し体をふきふき。
補給食とドリンクを買って、ベンチに座って休みます。癒される。このまま座り続けていたい。
そうもいっていられないので出発しましょう。
岩手町の北上川はものすごい濁流となっていて、雨量の多さを物語っています。動きがある川を見るのは好きなんですが、増水している様子は少し怖くもありますね。
雨上がりとロードバイクの不調
このあたりから雨脚は弱まっていき、止むまではいかずともだいぶ走りやすくなってきた。天気も回復傾向でいい調子!
そして、出発から3時間半後の10時に『道の駅 石神の丘』に到着しました。
駐輪場にロードバイクを立てかけて、荷物を全部おろします。
ここまでの雨量は予想していなかったので、軽量で取り回しのいいレインウェアを持参しましたが裏目に出たか。雨はレインウェアを通過して着ている服を濡らします。
木陰でTシャツを脱ぎ、思い切り絞ると気持のいいくらい水が出てきます。
休憩しつつ、道の駅に設置されているスタンプをノートに押印。御朱印やマンホールカードも好きなんですが、こういうスタンプも見かけるとつい押したくなる。
これも旅の思い出ですね!なので僕は荷物が重くなろうとも、旅の走行計画や出来事を記録しているトラベルノートを持参しています。
ロードバイクに戻り出発の準備を整えていると、オートバイに乗ったライダーさんに声をかけてもらいました。どうやら同じ大間崎をめざしているようで、立ち話が盛り上がる。
僕が自転車で旅をしていることに驚き、「自分はバイクだから」と謙遜していましたが、僕からしたらバイクの方がよほど大変です。お互いの無事を祈りながら、別れを告げました。
空は相変わらずどんよりとした灰色の雲に覆われていますが、雨自体は小降りに落ち着いてきました。雨雲レーダーによると、これから少しずつ晴れていくらしい。太陽が恋しいぜ。
あんまり上っている感覚がなかったのですが、国道4号の最高地点に到達です。
そして、ついに!晴れ間が見えた!雨もほとんど上がったので、ここからは快適なサイクリングを楽しめる!
なんて考えながら走っていると、ロードバイクの乗り心地に妙な違和感を抱く。
挙動に注意して違和感の原因を探ってみると、どうやらギアチェンジがうまくいかない、うまく変わらないギアがあるようです。なんだこれ?
ワイヤーが緩んでいるのかと思い、アジャスターを回して調整してみると、とりあえずすべてのギアが正常に切り替わるようになりました。
応急処置レベルの対応ですが、これでひとまず大丈夫そう。
旅の直前にビアンキストアで点検してもらったときに、チェーンとワイヤーの交換時期だと言われたのを思い出しました。
そのときはお財布事情が厳しかったのでチェーンだけ交換してもらったのですが、まさかワイヤーの寿命がここで来たのだろうか?
ま、今は問題なく走るから良しとしよう。ワイヤーの交換はこの旅が無事に終わってから考えよう!
国道4号をひたすら走ります。
濁流が流れる馬淵川。本来の姿も見てみたいものです。
自然が豊かで走っていて気持ちがいい。
ここは岩手県二戸郡一戸町という場所で、岩手県から青森県にかけて”戸”が付く地名が1~9まであるそうです。ちなみに四戸はないそうです。
青森県の八戸は有名ですよね。今回の自転車旅を終える新幹線も八戸駅から乗車する予定です。
出発から約89km走り、もう少しで岩手県二戸市にたどり着きそう。
まだまだ本日の走行ルートの半分くらいしか走っていないのに結構な疲労を感じていますが、体に痛みは一切ありません。
ゆっくりでもペダルを回していけば目的地にたどり着ける。がんばろう!
ついに晴れた!青空の下を走る
岩手県二戸市の国道4号沿いには『金田一温泉』という名探偵のような温泉街があるらしい。
雨は上がったが、油断はまったくできない。時折、空から雨粒が落ちてきて、「降ってきたか!」とハラハラしますが一瞬パラつくだけで曇りをキープしている。その調子だぞ。
馬淵川ふたたび。そして、川を渡るのは盛岡と金田一温泉をつなぐ『いわて銀河鉄道』の線路。
電車はからきしなので調べてわかりましたが、銀河鉄道なんて響きのいい名前ですね。
そこから少し走り馬淵川を渡ると、ついに!人生はじめての青森県に入りました!
青森県三戸郡三戸町は、漫画家である故・馬場のぼる氏の出生の地であり、代表作である絵本『11ぴきのねこ』を活用した町づくりに取り組んでいるようです。
僕自身はこの絵本を読んだことはないのですが、とても温かみがある可愛い猫のイラストに心を奪われました。猫好きなのでなおさら!
2013年から『11ぴきのねこ』石像の設置が進み、2020年3月についに11ぴきが勢ぞろいしたようなので、いつか自転車で石像めぐりをしたい。いや、する!
偶然にも青森県に入った直後、雲が消し飛んだ。
めちゃくちゃきれいな青空!気分が上がる!
太陽が出ると、やはり暑い。
レインウェアを脱ぎ捨てて走りますが、汗がしたたり落ちてくる。夏のサイクリングの醍醐味ですよね。こんな中を走りたかったんだ!
青空の下から約16km走ると、十和田市に入りました。
うん、当たり前のように曇ってきたね。青空はひと時の夢だったのだろうか?
今日の目的地である上北郡東北町の温泉旅館まで約20kmを残すところ。
時刻は16時を少し過ぎたところなので、この調子で走れば18時には到着するかな?個人的にはかなり順調に走れています。
10時間以上走っているので決して早くはないんですが、「あんまり早くについてもな~」なんて余裕をぶっこいているとタイミングよく道の駅が現れました。
ここは『道の駅とわだ とわだぴあ』というらしい。目的地まで目と鼻の先だからといって焦るのはよくない。ゆっくり休憩していこう。
エネルギー補給に購入したのが米粉で作られたソフトクリームと青森限定りんごサイダーです。
これがまた美味い!お米の甘さなのかな?上品で口当たりがよく、変に甘すぎないので疲れた体でもぺろりと食べることができました。オススメです。
ベンチに座って休憩していると近くで野菜を売っていたおじいちゃんが、「どこから来たんだ?」と話しかけてきてくれました。
盛岡市つなぎ温泉から走ってきた旨を話すと、とても驚いてくれました。普通に考えたら、自転車で丸1日走りっぱなしなんて狂気の沙汰ですもんね。
今日泊まる宿をご存じで、いいところだという太鼓判をもらいました。これは楽しみ。
野菜売りのおじいちゃんに別れを告げて、「今日の夕ご版はどうしようかな?」なんて考えながら残り20kmの道のりを走り出します。
残り1kmでまさかのトラブル
十和田市の自然を堪能しながら走ります。
眼前に広がる一面の田んぼ。緑が目に優しい。そして、彼方には雲間から太陽の光が差し込んで幻想的に風景を作り出しています。
長らくお世話になった国道4号から外れて、青森県道22号に入ります。
この道は小田原湖へと続く道。そこから県道165号を走ると青い森鉄道線の上北町駅があり、宿泊先はそのすぐそばです。
残り1km地点、悲劇は起きました。
後輪の方からパキン!という音。そして、タイヤが回るたびになにかがフレームに干渉しているような異音が続きます。
「木の枝でも挟まったかな?」
片足を突いて立ち止まり、後輪付近に目をやりますがなにもない。
嫌な予感がしたのでロードバイクから飛び降り、後輪をくまなくチェックするとぶっ刺さっていました小さい釘のような鋭利なものが・・・。
おそるおそる引き抜いてみると、瞬間、ブシュー!と音を立てながら勢いよく空気が抜けていき、あっという間にペシャンコになるタイヤ。
「マジか?」
空気の抜けたタイヤをむなしく眺めながら、なんとかそれだけ半笑いで呟きます。このタイミングでパンク?神様は最後の最後まで僕に試練をくださるぜ。
その場でチューブ交換をする気力がなかったので、宿までロードバイクを担いで歩きます。残りたったの1kmがこんなにも遠く感じるとは思わなかった。
時刻は18時ちょうど。
上北町の空に『外で遊んでいる子供たちは、気をつけてお家に帰りましょう』という夕方のアナウンスが響きます。なんだかノスタルジックな気分。ま、これはこれでアリか・・・。
そして、なんとか宿に到着。
事情を説明して空いているスペースを借り、チューブ交換に取りかかろうとサドルバッグを開けると嫌な臭いが鼻をつきます。
今度はなんだ!?バッグをひっくり返して中身を確認すると、チェーンオイルのフタが開いていてバッグ内に爆散していました。
泣きっ面にハチとはまさにこのこと。ああ、なんだかドッと疲れが押し寄せてきた。
萎えていても仕方ないので、速やかにチューブを交換。油まみれになった道具を拭いたり、洗ったりと大騒ぎでした。
幸い、その多くはジップロックに入れていたので大事には至りませんでしたが、とにかくバッグに染みついた匂いがひどい。これはすぐには落ちないだろうなぁ。
なんとか明日の準備まで整ったので、コンビニまで散歩がてら夕ご飯の調達に行きます。道中、庭先で手持ち花火に興じる家族がいて夏の到来を感じます。
宿に戻り、温泉に入りながら明日以降の走行計画について考えよう。
頭を悩ませるのは、なんといってもタイヤのパンク。まさか2日連続でパンクするとは想像もしていなかったので『二度あることは三度ある』的な思考に陥っています。
今日ほどじゃないにせよ、明日も長距離を走る。この先、大間崎までは自転車用品を買えるお店も激減していくことだろう。
そうなると、やはり予備チューブが1本では心許ない。油断してパンク修理キットを持ってこなかったのは、この旅で最大の判断ミスだったかもしれないぞ。
兎にも角にも、明日は予備チューブもしくはパンク修理キットを購入しよう。
周辺に自転車屋はあるのか?
探したところ、宿から約20kmくらい先の野辺地町というところにSANDAYというホームセンターがあり、そこに自転車用品も置いてありそうな感じです。
明日は朝イチで野辺地町まで走り、そのあと北上して横浜町を抜けて、むつ市の恐山を観光する。そして、待望の本州最北端・大間崎に到着。
この計画で行こう!
明日はいったいどんな試練が待ち受けているのだろうか?ワクワクして寝れないぜ。
本州最北端・青森県大間崎をめざす自転車旅、いよいよ佳境です。
【本日のライドデータ】
走行距離 164.45km(トータル281.01km)
所要時間 11時間44分
走行時間 9時間13分(-2時間21分)
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