千葉県から和歌山県まで1,400km以上続く『太平洋岸自転車道』を走る!
仰々しくはじめた自転車旅でしたが、財布を紛失するというアクシデントが発生。
神奈川県の『久里浜港』から静岡県の『熱海市』までの111kmで今回の歩みはストップとなりました。なんと締まらない。
時刻は14時30分。ビジネスホテルのチェックインまで1時間半あります。
せっかくここまで来たので熱海駅周辺をサイクリングして、見聞を広めていきましょう!
~前回のライドはこちら~

熱海七湯を巡ろう
さて、どこを走るかな?
駅前に観光スポットが載った周辺地図があったので見てみたところ、なにやらおもしろそうなものを発見しました。
『熱海七湯』
日本屈指の温泉街である熱海。
そのルーツであり、歴史的に重要な存在である7つの温泉だそうです。当時の入浴施設を再現したモニュメントが、このあたりに点在しているらしい。
地図で見るかぎり、いい感じに散らばっているので走り応えがありそう。
いいね!よし、今回は『熱海七湯』を巡り、制覇していきましょう!
出発!……の前に、地図を写真に納めておきます。これを頼りに7か所をまわろう。
まずは『平和通り 名店街』と呼ばれる商店街を抜けていきます。平日にもかかわらず、たくさんの観光客が押し寄せていました。
名店がところ狭しと立ち並び、なんだかいい雰囲気。アーケードになっているので、雨の日でも傘をささずに散策できるのは嬉しいですね。
もちろんロードバイクから降りて、押して歩いていますよ。自転車の乗り入れは厳禁です。
『又一庵謹製 熱海ばたーあん』
たくさんの人が集まっているお店がありました。創業明治4年から和菓子を作り続けている『又一庵』の”あんこ”とバターが令和の時代に巡り合ったようです。
愛知県名古屋市の”小倉トースト”を彷彿とさせるこの組み合わせ、強力すぎますね。
出口付近に愉快なパネルを見つけたので、記念に撮影しておこう。
熱海温泉ホテル旅館協同組合の公式キャラクター『あつお』だそうです。
公式HP『あつおの部屋』情報によると、社員旅行で訪れた熱海温泉に魅せられてそのまま住み着いていたところ、いつの間にか”妖精化”していたそうです。
なんという熱海温泉への愛。よく見ると羽根が生えていますね。
商店街を抜けると『いちごBonBonBerry 熱海ハウス』というお店がありました。
ここも長者の列ができています。
ひと昔前の熱海は……と語れるほど知らないのですが、なんとなく昔ながらの”THE・温泉街”というイメージを持っていました。
しかし、今はどうでしょう?
洋菓子やスイーツのお店、オシャレなカフェなど、いわゆる”映える”ものを提供してくれそうなところがとても多い印象です。
家族旅行や社員旅行の聖地だった熱海温泉は、いつの間にか若者にとっても人気の観光地となっていたのですね。すばらしい。
急ぐ必要もないので、フラフラと寄り道。
親水公園から見る熱海の海岸。なんとも穏やかな景色です。
時刻はもうすぐ15時になります。そろそろ本格的に『熱海七湯』を巡っていきましょう!
温泉街を駆ける
最初に訪れたのは『河原湯』です。
東屋は立派ですがモニュメント自体は想像していたより小さく、事前に七湯の存在を知らなければ見過ごしていたかもしれません。
説明文によると、温泉が豊富に湧き出ている河原が村人の入浴場になっていたそうです。
露天風呂、気持ちいいですよね。
約170m移動して、次は『佐治郎の湯(目の湯)』にやってきました。
これまた小さいな!温泉施設のモニュメントなんだよね?
説明文には『佐治郎という者の邸内にあった湯』と書かれていました。いったい何者で、なぜ七湯のひとつになったのか……謎に包まれています。
眼病によく効くといわれ、別名『目の湯』と呼ばれていたそうですが、こちらが七湯入り本命の理由だろうか?
よし、次に行こう。ここから近いのは『大湯』かな?
おお、すごい!これまでのものよりも格段に規模が大きい。
説明文によると、古来からの間欠泉で世界的に有名なんだそうです。昼夜6回、湯と蒸気を交互に噴出し、その勢いは地面が揺れるようだったらしい。
しばらく眺めていると大湯に異変。なんと、間欠泉が噴出しはじめました!
なかなかの迫力です。
もともとの間欠泉は明治末期に止まってしまい、今噴き出ているのは昭和37年に整備された人工のものですが、これはこれでいいですね。
立ち上がる湯と蒸気を見ている僕に、町の住民らしきおじさんが話しかけてくれました。
「最近テレビでも取り上げられたんだよ。あまり噴出しないから見れてよかったね」
財布を失くして”ついてない”とばかり思っていた今日という日でしたが、そうか……実は運がよかったのか。
なんだか前向きになれたぞ。ありがとうございました!
時刻は15時15分。
これまで『熱海七湯』の3つを巡り、折り返し地点。チェックインは16時からなので、いいペース配分で時間を使えていますね。
道中、干した魚が売られていました。さばみりん、うまそう。お腹が減ってきます。
個性的な温泉モニュメントたち
大湯から約120mで、4つ目『小沢の湯(平左衛門の湯)』に到着しました。
説明文には『沢口弥左衛門、藤井文次郎、米倉三左衛門の庭の湯を”平左衛門の湯”と称していました』と書かれていました。
「また人の名前!誰なんだろう……」
頭にハテナが浮かんだ瞬間、最初に見た『河原湯』の『農民や漁師や近隣の人達が自由に入浴できるのは、この”河原湯”だけでした』という説明文を思い出します。
昔は、きちんと整備された公共浴場のようなものがなかったのでしょう。
その中で、個人の庭に温泉があって入り放題というのは、まさに異例中の異例。歴史に名を残すには十分すぎる価値を持った温泉ということなんだろう。
自分なりの解釈になるため正否はわかりませんが、勝手に納得させてもらいました。
5つ目『風呂の湯・水の湯』にです。
どうやら”二湯一対”になっているようです。
風呂の湯は外傷に効くといわれており、その湯気でまんじゅうやお酒を温めて販売していたそうです。水の湯は、説明文を読んでもよくわからない。
いよいよ残りもわずかになってきましたね。
6つ目は、少しだけ見つけるのに手間どった『清左衛門の湯』です。
いわれなければ”温泉のモニュメント”とはわからない複雑な形をしていますね。
説明文には『農民の清左衛門が馬を走らせて、この湯壺に落ちて焼け死んだので、その名が付いた』とありました。
なにやら急に物騒な話。おそらく清左衛門にものっぴきならない事情があったのでしょう。
それにしても、自分の死が温泉の名前として後世に残り続けるなんて……数奇な運命だ。
よっしゃ、ラスト!7つ目は300mほど移動した先にある『野中の湯』です!
野中山のふもとに湧き出ていた温泉。
浅かったため、あまり入浴には使われていなかったようです。
説明文には、今までになかった”源泉の所有”が記載されていました。これは、七湯の中で唯一源泉が止まらずに湧き出し続けている……ということなのだろうか?
熱海市公園緑地課から『ここではたまごや野菜等を温めたり、調理したりすることはご遠慮ください』との注意書き。
なんだかいい味出してますね。
サイクリングの楽しさを見つめた日
さて、熱海七湯・完全制覇を成し遂げました!
モニュメント自体は想像よりも小さいものが多く、「どこらへんに熱海温泉の歴史に関与していたのか?」という部分がイマイチわかりませんでした。
これは僕の学習不足なところもあるので、精進していきたいと思います。
ただ、七湯を巡ることで自然と熱海の町を散策することができて、とても楽しかった。
目的の場所を発見したときの喜び、次への期待……というサイクリングのおもしろさの根源に改めて触れることができたと思います。
長距離を走ることだけが自転車旅ではない。訪れた町を知るために走る。
これも立派な”旅”ですね!
そんな風に温泉街を駆けることができたのは、貴重な経験でした。
【本日のライドデータ】
走行距離 4.46km(トータル115.81km)
所要時間 1時間15分
走行時間 0時間57分(-0時間18分)
走行距離は、寄り道含めて約4.5kmでした。
フラフラせず適格にモニュメントを見て回れば、徒歩でも十分に楽しめる距離感。興味がある人は食べ歩きでもしながら散策することをおすすめします。
1日のおわりに
出発の地、熱海駅に戻ってきました。
15時40分といい感じの時間になりました。
それではビジネスホテルに行き、チェックインを済ませましょう。
今回泊まるのは『東横イン熱海駅前』です。
ご厚意でロードバイクは室内に持ち込むことを許していただきました。ありがたい。
自転車で旅をしてきて、宿泊施設に自転車を邪険にされたことは記憶にありません。室内持ち込みが不可でも、自転車の安全を考えた場所への駐車をすすめてくれることが多い。
室内に入ると、なんやかんや100km以上走ってきた疲れを熱いシャワーで癒します。
ここまで来て熱海温泉に入れないのは残念ですが、現金がないためどうしょうもできない。しかし、十分に気持ちよく、至福のひと時でリフレッシュしました。
荷物を整理したら、今度は徒歩で熱海の町に繰り出してみましょう。自転車があってゆっくり見て回れなかった商店街や駅ビルの中を散策してみます。
「さて、今日の夕ご飯はどうしよう?」
現金やクレジットカードが手元にない僕にとって、頼れるのはスマホのキャッシュレス決済のみ。具体的にいうと”d払い”になります。
これが使えるお店を探さなければいけないのですが、外からだと判断がつきません。
店内に入り、「d払いって使えますか?」と聞くことに羞恥心があり、結局はコンビニ弁当に妥協。まぁ、僕の自転車旅の食事事情なんていつもそんなもんです。
お店で食べることの方が珍しいので問題ない。
ホテルに戻り、消化したカロリーを取り戻すためにバクバクとご飯をたいらげながら、明日のことに考えを巡らせます。
「久里浜港までどうやって戻ろうか?」
財布を失くした直後は気分が落ちていて、「d払いで切符が買えるなら電車輪行しようかな……」なんて考えていましたが、熱海観光でメンタル復活。
ロードバイクに乗って帰ることにしました。
来た道をそのままそっくり戻ることに抵抗はありましたが、それはそれでおもしろいかも?
同じ道でも行きと帰りでは、見える景色も違うはずです。明日はそういう変化を楽しむサイクリングにしていこう。
そんな風に考えながら、その日は就寝となりました。お疲れさまでした。
~次回のライドはこちら~

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