北海道自転車旅の2日目。
長万部町から観光地としても人気のある『小樽市(おたるし)』まで走ります。
初日はパンクや足つりが発生し、楽しいながらもハードなサイクリングとなりました。
予備チューブの消耗は仕方ありませんが、肝心かなめの”体調”はどうだろう?朝起きてすぐに、体を伸ばして調子をはかります。
どこも痛くない。水柱の轟音をものともしない爆睡のおかげで、まさに絶好調。
2日目はどんな出来事が待ち受けているのだろう?いざ、旅立ちのとき!
~前回のライドはこちら~
長万部町からの旅立ち
身支度を整えて、温泉旅館のご主人にあいさつをします。
行き先を聞かれたので、「小樽まで行きます」と答えるとたいそうおどろき、親切に山越えのルートを教えていただきました。
現地の人からの情報は、いくら地図を眺めていても得られない貴重なもの。覚えておこう。
時刻は6時30分。早すぎも遅すぎもしない絶妙な時間。
出発!……の前に、昨日から気になっていた石碑の前で記念撮影をおこないます。
『長万部温泉 発祥之地』
なかなかに立派ですね。
それにしても、発祥の地が目の前にある『温泉旅館もりかわ』は、僕が想像する以上に歴史のある宿だったのかもしれません。
ひと晩、お世話になりました。いってきます!
まずは長万部町で今いちばんホットな場所、温泉の噴き出る『飯生神社』を訪れてみよう。
宿からすぐ近く、ほんの600mほど走ったところにあるらしい。途中の自動販売機で長旅に備えてドリンクを購入し、それからまっすぐにむかいます。
ほどなくして到着。
朝早いというのに地元の人なのか観光客なのか、すでにチラホラと見物人が集まっていました。なんという人気……というか話題性。
とりあえず、見てみよう。
思わず感嘆の声がこぼれます。
宿の客室で聞いた音とは比較にならないくらいの大音量を響かせながら、ものすごい勢いで水が噴出しています。
昔、旅行で訪れた長野県諏訪市。そこにあった”間欠泉”を思い出しました。
あちらも見ごたえがありましたが、記憶では”噴き出るタイミング”があったはず。今、目の前にあるのはハンドルを全開にひねられた蛇口が、空に向かって水を放っているような光景。
なかなかに不思議です。
その轟音で近隣住民を悩ませてい水柱も、噴出から50日後に突如として止まったそうです。
現在、Googleマップで調べてみると、その場所は『長万部巨大水柱跡』と紹介されていました。ひとつの名所?……が生まれた瞬間に立ち会えて、とても貴重な経験でした。
小樽市をめざして
それでは、いよいよ本格的に小樽市をめざして走っていきましょう!
地図でいうとことの『②』ですね。
海岸線を走らずに内陸を突っ切る最短ルートを利用するため、昨日とは違い、かなりのアップダウンが予想されます。
飯生神社を出発して、すぐに大きな道路にぶつかります。
この国道5号を使ってひたすら北上していけば、小樽市に到着するはず。
途中、北海道道9号との分かれ道があります。
道道9号を進むルート(地図の点線矢印)だと、海沿いの道に出るようです。
海岸線を走り、そのまま『積丹(しゃこたん)半島』をぐるりと回ろうか……なんてことも考えたのですが、それだけで軽く100kmはプラスになってしまうため見送りました。
国道5号を道なりに進んでいると、めずらしくストレートに読める『黒松内町(くろまつないちょう)』にやってきました。
しかし、実は町名・黒松内の由来もアイヌ語で”クル・マツ・ナイ”といい、意味は”和人の女のいる沢”だそうです。
なんだか、おもしろい。
看板に描かれているのは、ブナ林と天然記念物のクマゲラです。
市町村の境界に設置されたこの看板、北海道では『カントリーサイン』と呼ばれています。
名所や特産物のイラストが描かれているため、その町がどんなところなのか?ひと目でわかるようになっているのです。
このカントリーサインを眺めるのも、北海道を走る魅力でしょう!
そして、さっそく青い案内標識に目的地が出てきました。
『小樽 124km』
冷静に考えると、結構な旅路ですよね。
スポーツ自転車に乗りはじめたころには考えられない距離を、臆することなく走っています。サイクリストとして成長したのか、距離感が崩壊したのか、はたまた両方か……。
細かいアップダウンを越えて約25kmを移動すると、そこには『道の駅 くろまつない』がありました。ちょうどいい。休憩していこう。
サイクルラックも完備。ありがたいですね。
とりあえずトイレ休憩をしてから、ドリンクを購入してボトルに補充。
「北海道は夏でも涼しいんだろうなぁ!」
来る前はそんな風に考えていましたが、実際は日差しが強く、十分に”暑い”と感じる気温です。しかし、ときおり吹く風は適度に涼しく、とても心地がいい。
建物の前で記念撮影をしておこう。
入口にはフランス語で『toit vert Ⅱ(トワ・ヴェール・ドゥー)』と書かれています。
意味は”緑の屋根”で、黒松内町でハムやソーセージ、チーズなどの食品加工製品づくりをおこなうセンターのⅡ(ドゥー)……つまり、2号店なんだそうです。
おいしいパンやピザが食べられるとのことなので、食事めあてに立ち寄るのもいいですね!
ひたすら走る国道5号とヒルクライム
それでは再出発。
黒松内新道は、自動車専用道路なのでもちろん通行できません。直進します。
そして、今回の自転車旅ではじめての本格ヒルクライムがやってきました。
かなり、しんどい!
道幅が広く、車をさほど気にせずマイペースに安心して走れるのはせめてもの救い。
サイコンに目を落とすと、ディスプレイには”勾配8%”と表示されていました。積載した荷物のせいか、体感的にはもっと急できつい坂のような気がします。
先は長い。焦らず、無理せずいこう。
約6kmにもおよぶ長い坂道を上り切ったところで、新しい町にやってきました。
温泉とお米で有名な『蘭越町(らんこしちょう)』です。
看板によると、この先に道の駅があるみたいなのでちょっくら立ち寄ろうかな。
国道5号をもくもくと走ります。交通量は案外少ない。
少し雲が出てきたな?雨が降る心配はなさそうなので快適といえば快適……ですが、やっぱり太陽が出ている方が気持ちいですよね。
すいすいと進んでいき、到着しました。
『道の駅 らんこし・ふるさとの丘』
かなり年季が入っており、「営業しているのかな?」と心配になりましたが、よく見ると店員さんや観光客でにぎわっていたのでひと安心。
クレミアのソフトクリームを買ってみました。
ご当地モノというわけではないので、今まであまり食べたことがなかったです。
うん、おいしい!エネルギー補給にはもってこいの一品。
出発からここまで約40kmの道のりを、3時間かけて走ってきました。
小樽市までは、残り3分の2くらいかな。
倶知安町まで走ると、そこから”国道5号を使うルート”と”道道393号を使うルート”に道が分かれます。どちらが正解だろう?
Googleマップでサクッと検索したところ、案内されたのは道道393号ルート。
しかし、なにか引っかかるものを感じて念入りにリサーチ。すると、国道5号ルートは、長万部町の温泉旅館のご主人が教えてくれた”稲穂峠を越えるルート”だということが判明します。
せっかくなので、道の駅売店の店員さんに相談してみると、「国道5号を走った方がいいよ!」……というような話をお聞きすることができました。
道道393号はけっこうな山道を走ることになるとのことで、少しこわい。
ヒルクライムが続くのはいいのですが、やはり北海道といえば”熊”の恐怖です。なるべく交通量の多い道を走った方が安全でしょうし、アドバイスに従うことにしよう!
北海道、自然の中を銀輪と共に
時刻は9時45分。道の駅を出発するとすぐに、青い案内標識があらわれました。
ついに小樽市まで100kmを切りました。
やはり走っていて、残り距離が3ケタと2ケタでは、「小樽までもう少し!」感が全然違います。気持ちにも余裕が出てきて、踏み込むペダルにも力が入るというもの。
国道5号と道道267号が交わるところに、巨大なボウリングのピンがありました。
『交通安全 みんなの願い 蘭越町』
ありがたい言葉ですね。
僕も公共道路を何時間も利用する身。事故を起こさないように、事故に巻き込まれないように気をつけなければなりません。
それにしても、なんでボウリングのピン?調べても蘭越町とのつながりがわからず、「町民が好きなのかもしれないな」と当たり障りのない思いつきで納得させます。
道の駅からの平坦道、ボウリングのピンからの下り坂を抜けると、細かいアップダウンの応酬がはじまります。
なかなかにつらい道のりですが、それでも自然の中を走るのは楽しい。
あの山はなんて名前だろう?山頂が雲で隠れているのにもかかわらず、圧巻のたたずまい。
どことなく富士山に似ている……と思ったら、別名・えぞ富士とも呼ばれている『羊蹄山(ようていさん)』でした。多分。
標高1,898mの北海道を代表とする名山です。
さらに進むと、ひまわり畑があらわれました。
太陽にむかって懸命に伸びる姿は、なんだか元気をもらえます。しかし、これだけの数がこちらを見ていると、なんだかぞわぞわするな。
『あなたを見つめる』
ひまわりの花言葉のひとつ。なるほど、まさにピッタリの表現ですね。
すぐ先に『道の駅 ニセコビュープラザ』がありました。しかし、ここはスルー。
いつの間にか入っていた『ニセコ町』は、なんでカタカナ表記なんだろう?
もともとはアイヌ語で”切り立った崖”を意味するニセコですが、漢字では”二世古”と表記されるようです。それが定着せずに、アイヌ語のまま残った地名らしいですね。
眼前には連なる緑色の山脈。
そして、手前には散歩したら気持ちのよさそうな広場がありました。
看板には『尻別川(しりべつがわ)』の文字。一瞬、「どこに川があるんだろう?」なんて思いましたが、少し進むと雄大な流れが姿をあらわします。
尻別はシリ(山)・ベツ(川)……つまり、アイヌ語で”山を沿ってくだる川”という意味。
個人的に、現在使われている言葉や名前の由来をたどるのがおもしろく、ブログを書くにあたりついつい調べてしまいます。以降もお付き合いください。
暑い日の炭酸は控えめにいって最高
時刻は12時10分。ようやく『倶知安町(くっちゃんちょう)』にやってきました。
Googleマップを拡大してみると、直線の道路が格子状に、いわゆる”碁盤の目”のような形の街並みをしているようです。
交差点の信号機にしても、ひとつに対して『北2西1』『北2東1』のように、方角と番号が複数取りつけられています。つまり、同じ信号機でも進入方向によって名前が変わるのです。
碁盤の目と相まって、慣れてしまえば道に迷う心配がなくなりそう。
先に進むと、倶知安町の看板を発見。
看板にはマスコットキャラクター『じゃが太くん』の姿がありました。
特産物の男爵ジャガイモが、雪のつもった羊蹄山のニット帽をかぶっているというビジュアル。そして、ウインタースポーツを楽しみに訪れる人も多いということで颯爽とスキーをしています。
ご当地キャラは本来、このくらいわかりやすい方がいいのかもしれない。
出発から約80km地点。アップダウンが多かったこともあり、体力消耗が激しい。
エネルギー補給のために、普段はあまり飲まないコカ・コーラを購入。
これがまた美味い!
甘味と炭酸が体の中に染みわたり、活力を与えてくれます。うーん、これは逆にあまりハマらないように気をつけよう。
余談ですが、コンビニ以外で飲み物を買うときは、写真にもある『Coke ON(コークオン)』アプリに対応した自動販売機を積極的に利用しています。
これ、なにかっていうと、スマートフォン連動タイプの自販機でして、買い物をするたびに専用アプリ内で”スタンプ”がもらえるようになっているんですよね。
それで、スタンプが15個たまると”ドリンク1本無料チケット”がゲットできちゃうんです。
結構たまっていくので、なんとなく得した気持ちになりますよ。
もうひとつ、僕は自転車旅のときは財布をリュックサックに入れているので、とてもアクセスが悪いんです。スマホと連動させると、キャッシュレス決済もできるので便利!
日本コカ・コーラ社の回し者というわけではないですが、暑い時期のサイクリングはとにかく水分補給が大切ですからね。
お得に買い物できるに越したことはない。
しゅわしゅわの炭酸パワーもあり、なんとか続くヒルクライムを走破。
そして、上った分だけ坂道を駆け下りる!
あまりスピードを出すと危ない。それはわかっている……わかっているけど、この疾走感がたまらない。自転車と一体になり、風を切り裂いて走るのは気持ちがよすぎる。
細心の注意を払い、自分が制御できるだけの”速度域”の中で、最大限楽しんでいこう。
実際のところ、僕のような貧脚は上り坂でかなりの時間をロスするため、下り坂をふくめ、気持ちよく走れるところではなるべく加速していきたいんです。
そうしないと、ダラダラしたサイクリングになってしまいますし、目的地までたどり着くのにとんでもなく時間がかかってしまいます。
つまり、メリハリですね!
さて、北海道自転車2日目もいよいよ折り返しかな?
小樽の地に足を踏み入れるには、この先にある『稲穂峠』をクリアしなければいけません。本日最大のヒルクライムになるでしょう。
気合いを入れて走ろう!後編に続く。
~次回のライドはこちら~
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