日本横断ライドの最終日となる3日目は、長野県長野市から新潟県上越市の直江津をめざして走っていきます。
走行距離は約65kmを予定。距離としてはこれまでで1番短いですが、疲労も溜まっているので、焦らず、無理せず、楽しんでいきたいと思います。
太平洋と日本海。遠く離れたふたつの海を、クロスバイクで走ったルートで結ぶ。
2泊3日の旅路の果てに、なにが待ち受けているのか?
~前回のライドはこちら~

ブログ記事をもとに、大幅な加筆修正を加えた電子書籍です。
興味のある方はご一読ください。
オートロックを開錠せよ
最終日は、余裕をもって走れるように少し早めの5時に起床。
少し早すぎた気もしますが、同部屋の人を起こさないようにこっそり部屋を抜け出して、コンビニまで朝ご飯を買いに行きます。
ゲストハウスは他の宿泊客に気を遣わなければいけないのですが、普段の生活では得られない”非日常感”を味わうことができるので好きですね。
歩きながら体の調子を確認。
ビンディングのおかげで両足の痛みはありません。お尻も無事です。ただ、長時間にわたり自転車に乗っていたせいで、インナーパンツと皮膚が擦れて少しヒリヒリしていました。
寝る前にオロナイン軟膏をぬりぬりしておいてよかった。昨夜に比べて痛みは和らいでいます。
それにしても、長野県の朝は寒い!5月とはいえ早朝は、Tシャツの上にサイクルジャージを着ただけでは、かなり肌寒かったです。
若干、地面が湿っている。夜に雨が降ったのかな?
近くのコンビニで買い出しを済ませると、小走りでゲストハウスに戻ります。
共用ラウンジでおにぎりを食べていると、宿泊客のおじさんが入ってきたので意を決して話しかけてみました。
「おはようございます!」
短い時間でしたがお互いの旅の話を語り合うことができ、とても楽しかった。こういう一期一会の出会いがあるのも、旅人が利用するゲストハウスならではですね。
身支度を整えて準備万端。直江津に向けて出発しよう!
ゲストハウスの正面玄関は朝7時にならないと開かないので、裏口から旅立ちます。まずは、玄関に置いてある自転車を担いで運び、裏口から外に出ます。壁にでも立てかけておこう。
そして、リュックサックを取りに戻り…しまった。ここで、まさかのアクシデント発生。
ゲストハウスの裏口はオートロックになっていて、開錠に4桁の”暗証番号”が必要なんです。すっかり忘れていました。
暗証番号が書いてある紙はフロントに返却しちゃったよ。
「あれ?これ、詰んだ?」
正面玄関が開く7時まで待つとなるとまだまだ時間があるし、出発が遅れると直江津に到着する時間も遅くなるので、それは非常にマズい。
あきらめるな!裏口の使い方を教えてもらったとき、朝ご飯を買いに行ったとき、少なくとも2回は自分の手で暗証番号を入力している。思い出せるはずだ!
おぼろげな記憶を頼りに入力してみると、なんとか3回目で開錠に成功。あっぶねぇ…。
朝っぱらから冷や汗をかきましたが、6時40分になんとか旅立つことができました。
ひと山越えればダウンヒル
ゲストハウスを出発し、長野駅の前を通って県道37号を走ります。予定ではこの道で『野尻湖』まで走っていき、そこから国道18号に乗りかえて直江津をめざします。
県道37号を5kmくらい走ると『三登山』を越えるヒルクライムが現れました。
朝イチから上り坂はキツい…と思う反面、「碓氷峠を越えてきたんだ。この程度の名もない峠なんぞお茶の子さいさいよ!」と余裕をぶっこく自分もいました。
しかし、いざ上りはじめるとキツいのなんのって!これ、碓氷峠より斜度あるんじゃない?
長野市の街並みがすっかり小さく見えます。短い距離で結構高いところまで上がってきましたね。それだけ、勾配が急だったということか。
約3kmくらい走ると、ようやくキツい上り坂も終了。お疲れさまでした!
上り切った先に、山の上にかかる大きな橋があったので、その絶景を写真に撮ろうと思ったら、この旅で4回目の立ちゴケ。本当に進歩しないやつですね!
止まるためにビンディングを外そうとしたら、ヒルクライムの疲労でうまく外せず、もたもたしていたら速度がゼロに…。そのまま、右側からバタンです。
クロスバイクに故障がなかったのは、本当に運がよかった。怪我もなかったので早々に立ち上がり、ライドを再開です。良くも悪くも慣れてきたな…。
橋を渡って目の前に現れた坂中トンネルを抜けると、そこからは上がってきた分の”下り坂”が待っていました!自然の中を颯爽と走っていきます。
ダウンヒルは怖い反面、楽だし本当に気持ちがいい。路面のデコボコには細心の注意を払いながら、坂道を駆け下りていきます。
しばらく走ると、青い交通標識が現れました。
日本横断ライドの目的地である”上越”の文字がはっきりと見えました。いよいよ、今回の自転車旅も終わりが近づいてきたか。少し寂しい気持ちになります。
いや、感傷にひたるのは早すぎますね。
油断せずに、長野県随一の観光スポットである野尻湖をめざします!
道中では雄大できれいな景色が見放題。思わず、足を止めて写真を撮ってしまう。あの山はなんていう山だろう?
ちなみに、ほとんどの写真をiPhoneで撮影しています。
デジカメは持ってきたんですが肝心のメモリーカードを入れ忘れてしまい、ほとんど写真が撮れませんでした。この旅で唯一の忘れ物。悔やまれる。
それにしても、iPhoneで撮影すると、写真が地図上に表示されて便利ですよね。見返したときに撮影場所がひと目でわかりますし、旅の思い出が蓄積されていく感じが好きです。
そういう機能があるデジカメってあるのかな?ぜひ欲しい。
野尻湖を訪れる前に、案内看板を発見したので『道の駅 しなの』に立ち寄りましょう。
焦る必要もないので少し休憩です。気温が低く、風が強いのでかなり肌寒いですが、そんな中で飲むホットコーヒーは格別。癒されます。
時間的に施設のほとんどは営業していませんでしたが、信濃町の自然と道の駅独特の空気を感じることができたので大満足。
よし!もう目と鼻の先にある野尻湖まで、ペダルを回していくことにします。
ナウマンゾウとパンクに遭遇しました
走っていると、あっという間に野尻湖に到着しました~!
癒される景色が目の前に広がっています。野尻湖は、長野県の天然湖としては諏訪湖に次いで2番目に大きく、一周は約15kmだそうです。
そして、野尻湖といえばやはりこれでしょう。
ナウマンゾウ化石の発掘地。
1984年、野尻湖畔で旅館を営んでいた主人が『湯たんぽの化石』を発見したことが、ナウマンゾウ発掘のきっかけとなったそうです。
この『湯たんぽの化石』が、ゾウの歯ではないのか?ということから、野尻湖で発掘作業がはじまって、ついにはナウマンゾウの化石を発見するに至ったわけですね。
ちなみに、野尻湖で化石が見つかるのは、野尻湖人がナウマンゾウを狩るときに、足を止めて動きを鈍らせるために野尻湖に追い詰めていたかららしい。うーん、壮絶。
野尻湖を堪能できたし出発するか!と思ったら、ナウマンゾウの親子を発見。
大昔の野尻湖がよみがえったようですね。景色がきれいすぎて、なんだか合成ぽく見えます。
ナウマンゾウについてもっと知りたい!という人は『野尻湖ナウマンゾウ博物館』にお立ち寄りください。僕も本当は見学したかったんですが、今回は残念ながらスルーです。
直江津までの残り約40kmは、ひたすら国道18号を走ります。景気よく飛ばしていると、すぐに長野県と新潟県の県境がやってきました。
ついに新潟県までやってきたのか!長野県はほとんど素通りになってしまったので、いずれ観光メインで走りに来たいな。
野尻湖から先は直江津までは、ほとんど下り一直線の国道18号が続いていて、楽しすぎます!気持ちよすぎます!爽快すぎます!うっひょーい!
写真ではわかりにくいですが、緩い下り坂になっていて、こういう道が延々と続いています。路側帯も広く、路面状態も悪くないので快適に走れますね。
「日本横断ライドを計画して、実行して、本当によかった!」
心からそう思った瞬間でした。
時刻は9時45分。
かなり順調に走れていたので、「なんだ、案外早く着いちゃうかな?」なんて考えながら道路を駆け下りていると、急にクロスバイクの挙動がおかしくなります。
ハンドルがブルブル震えて安定しません。なんだこれ?
もしや!と思い、自転車を止めてタイヤを調べると、悪い予感が的中です。後輪が思いっきりパンクしていました。
ここに来てパンクとは、一筋縄では完走させてくれないなぁ…!
自宅でチューブ交換の練習しておいてよかった。手順は頭の中に入っている。広いスペースまで自転車を移動させて、作業を開始しましょう。
クロスバイクをひっくり返して、後輪を外します。
サドルバッグから取り出した”タイヤレバー”をホイールとタイヤの間に挟み込んでいき、タイヤをめくって、中のチューブを引っ張り出しました。
ふう、第一段階終了。
それにしても、経験があるとはいえたった1度だけ。そして予備チューブは1本だけ。ちゃんと交換できるだろうか?またパンクしたらどうしよう?
ドキドキしながらチューブ交換をしていると、「大丈夫ですか?」と、グラベルロードに乗ったお兄さんが親切にも声をかけてくれました。
事情を説明すると、「初心者なのでチューブを交換したことはありませんが、道具はあります。足りないものがあったら言ってください」とのこと。めちゃくちゃ親切です。
落ち着きを取り戻して、少しずつ作業を進めていきます。その間、お互いの旅の話で盛り上がっていました。
空気を入れる段階で、僕もお兄さんも携帯ポンプを持っているのに使ったことがなくて、うまく空気が入らず苦戦しましたが、試行錯誤してなんとか使い方をマスター。
シャカシャカを空気を入れる僕、それを見守るお兄さん。途中、「交代しますよ」と言ってくれたのでお言葉に甘えます。シャカシャカと空気を入れるお兄さん、それを見守る僕。
そんなこんなで30分くらい作業をして、なんとかチューブ交換が完了しました。
本当に助かりました。お兄さんにお礼を言い、お互いの旅の無事を祈りながらお別れしました。一期一会の出会いに感謝です。
自分にできる・できない関係なく、困っている人がいたら積極的に声をかけてあげられるようなサイクリストになろう。そう強く思った出来事でした。
日本横断の旅、堂々完結!
走りはじめは慎重に。
きちんとチューブは交換できているか?空気は甘くないか?タイヤはうまくつけられているか?ひとつひとつ確認しながら走ります。
下り坂なので余計に慎重にならないといけません。
走っては止まって空気が抜けてないか確認を繰り返し、しばらく走っても問題なかったのでチューブ交換は成功ということでしょう!
しかし、もう予備チューブがない。パンクを経験すると、予備チューブがない状態で走るのがとたんに怖くなりますね。
もしもパンクしたら、自走不能です。
国道を走っているとはいえ、基本的には田舎道。自転車屋なんてそうそうないでしょうし、輪行するにしても駅まで最低でも数kmは歩くことになるでしょう。
なんだか不安になってきた!
そう簡単にはパンクしないだろうけど、せめて道中で予備チューブを買うまでは何事も起きないでくれ!直江津までドキドキしながらのライドになりそうだぜ。
路上に落ちている変なものを踏んだり、タイヤに衝撃を与えないよう慎重に走っていると、妙高市に入っていたようです。
なんて山脈かわかりませんが、てっぺんは真っ白な雪で覆われており、それがまた美しい。
しばらく走っていると、ついに上越市に入ったぞー!
建物やお店が増えてきて、国道18号の交通量も多くなってきました。そして、次第に車道は広く、路側帯は狭くなっていき、しまいには”高速道路”のような道に…。
「ここを走ってても大丈夫なのか?」
道路上には『自転車通行禁止』の交通標識はなかった…と思うけど、見落とした可能性もゼロではない。さっきまでは地面を走っていたのに、気づけば少し高くなったところにいるぞ。
国道18号を下りる車、下道から合流する車が増えてきて、本物の高速道路のようになってきた!走っていいのか?とかいう前に、単純にここを走るのは怖い!危険だ!
そう判断して、国道18号を下りることにしました。なんだったんだ?どこかで自転車通行禁止のバイパスに切り替わっていたのだろうか?
群馬県から長野県、新潟県まで長い距離をお世話になってきた国道18号とは、こんな形でお別れしたくなかったのですが、側道を走るのであんまり変わらないんですけどね!
上越市はとても栄えていました。
ショッピングセンターや大手のスポーツショップが立ち並んでいたので、「予備チューブが手に入るかも?」と考えたのですが、ペダルを回す足が止まりません。
目的地までもう少しだと思うと、勢いに乗っている今!止まりたくない!走り続けたい!そんなハイテンションなスイッチが入ってしまったのです。
国道18号がついに終わりを告げたようです。
その側道を走っていた僕にも”直江津”と書かれた青い交通標識が、はっきりと見えました。あと一歩のところまで来た!待ってろ、日本海!
最後の仕上げということで、目的地を決めます。直江津は直江津なんですが、せっかくなら日本海がきれいに見えるところにたどり着きたい。
休憩がてら調べてみると『船見公園』という場所がありました。海沿いに位置しており、その名前からしても絶対に見晴らしいいでしょう!ここに決めた!
船見公園まで約3kmを、直江津の町を眺めながら走ります。知らない町にはじめて訪れるこの感覚が好きですね。
ここまで来たら焦らずに、ひと漕ぎひと漕ぎを大切にペダルを回します。
そして!ついに!2泊3日の自転車旅、日本横断ライドを完走することができました!
船見公園に到着です。そして、目の前に広がるのは夢にまで見た日本海。
風は強いものの天気はよく、空と海の青さが見ていて心地いいです。とてもきれい。
到着時刻は12時20分でした。
しばらく海を眺めていると、「太平洋と日本海を結ぶ日本横断の旅が終わったんだな…」としんみりしてきました。
ツラいことも、苦しいこともありました。
でも、それ以上に楽しかったです!はじめて走る道は新鮮で刺激的だった。きれいな景色もたくさん見れた。一期一会の出会いもありましたね。
臆せずに勇気を出して自転車旅に出てよかった。心の底からそう思います。感無量です!
今回の旅では、たくさんのものを得ることができました。
その中で、特に大きいのが『自信』と『ひとり旅の楽しさを知れた』ということです。
何泊もしながら、はるか遠くの目的地まで走るという経験したので、「クロスバイクがあればどこにでも行ける!」という確固たる自信を手に入れました。
重要なのは体力や筋力などではなく、下準備と走り出したい!という熱い気持ちですね。
そして、僕は今まで”ひとり旅”というものに否定的だったんです。ひとりで旅行をしても寂しいでしょ?行く意味がわからない。
でも、自転車に乗りはじめて、ひとりで行動するようになってから、その考えは変わりました。
すべてが自由なひとり旅の解放感は最高です!
素晴らしい経験ができました。僕の今後の人生の大きな財産になることは間違いありません。
「また、自転車で旅をしたい」
そう思わせてくれるような、2泊3日の旅になりました。以上!
【本日のライドデータ】
所要時間 5時間40分
走行時間 4時間17分(-1時間23分)
走行距離 75.89km(トータル371.48km)
海の向こうへ続く道
さーて、感傷にひたってないで、そろそろ帰りますか!最後に日本海を目に焼きつけようと顔を上げると、なにやら海の向こうから声が聞こえます。
「ここまで来ていて、ワタシに上陸しない…なんてことないよね?」
この方角…もしかして、この声の主は…!
「そうだよ、佐渡島だよ!」
やはり!アルファベットの”S”のような形をしていて『佐渡金山』や『朱鷺』で有名。サイクリストからも愛されている佐渡島だったか。
は、はい!上陸させていただきます~!
そんなわけで、せっかく直江津まで来たのでフェリーに乗って『佐渡島』まで渡りたいと思います。
急きょ思いついたわけではなく、実は最初から計画済みだったんですよね!
2泊3日で日本を横断して、3日目にそのまま佐渡島まで渡り1泊。4日目に佐渡島サイクリングを楽しんで、その日のうちにフェリーで新潟市に上陸。
そして、本当の最終日である5日目に新潟駅から新幹線輪行で帰宅する。これが2018年ゴールデンウィーク自転車旅、真の走行計画だったんです!
島を走るのは伊豆大島以来なので、とても楽しみ。
太平洋から日本海を結ぶ日本横断の旅は終わりましたが、次回は『佐渡島ライド』の様子をお届けします!お楽しみに~!
~次回のライドはこちら~

コメント
コメント失礼します。
自分も初心者なのですごく勉強になりました。
特にビンディングペダルを取り付けた時の記事はハラハラしながら読んでしまいました(笑)
これからも更新頑張ってください!
応援しています(^ ^)
同じ初心者の方にそう言っていただけると、励みになります。゚(ノ∀`)゚。
はじめてビンディング付けたときのことを思い返すと、今でもハラハラします!
ありがとうございます!小まめな更新を心がけますっ!
走るのにいい場所があれば、是非教えてくださいね(人゚∀゚*)
日本横断の旅、完走おめでとうございます!
渋峠越えでの日本横断も機会があったら是非お願いします。
あと、平塚市日向岡もリクエストしていいでしょうか。
最近、なかなか出かける機会がなくて、自分で訪問できません。リクエストばかりですみません。
ありがとうございます!なんとか完走できました。
日本横断はともかく、渋峠は寒くなる前に走りに行く予定です!
日向岡…?調べてみたら、「なるほど( *`艸´)」とつぶやいてしまいました。行ったら写真撮ってきます!
そういえば、ご紹介いただいた三峰神社、走ってきましたよ!
またブログ記事にしますね。
にしきさま
先月、日本海まで走ってきました。
https://riflebird.at.webry.info/202110/article_4.html
同じ2泊3日、宿泊も高崎、長野でしたので、非常に参考になりました。
細かいことも書いてありましたので、それを参考に準備して、無事に走りきることができました。
これからも記事を楽しみにしております(kindle本も拝見させて頂きました)。
コメントありがとうございます!
ライフルバードさんの日本横断に、僕のブログ記事&電子書籍が役に立ったようで嬉しいです。
無事に走り切れたようで本当になにより。
更新が遅くなっておりますが、自転車旅にはちょこちょこ出かけているのでなるべく早く記事にしますね。
ライフルバードさんも、またどこか走られたら教えてください!