今回は、走る前におこなうべき”準備”についてお話します。

自転車って”走る”以外にやることがあるの?
クロスバイクやロードバイクは、シティサイクル……いわゆる”ママチャリ”とは比較にならないくらいのスピードをラクに出すことができる乗り物です。
自然と巡航速度は速くなり、サイクリングの距離も長くなる傾向にあります。
そうなると気をつけなければならないのが、交通事故やアクシデントの発生ですね。
しかし、心配は無用です。
正しく用意・準備を整えれば大抵のことは防止&回避することができます。
安心安全なサイクリングを楽しむため、走るのに”必要となる知識”を深めていきましょう。
②乗車前の車体チェック
この2点について、実体験にもとづき説明していきます。
基本的でとても重要なこと。
しかし、難しい内容ではありませんので、肩の力を抜きながら読んでいただけると幸いです。
目次
必要なアイテム&装備のおさらい
これまで他の『スポーツ自転車入門』記事で、楽しむのに必要なアイテムや装備についてお話させていただきました。
その中にはサイクリングに持参した方がいいアイテムも、もちろん含まれます。
おさらいしていきましょう。
自転車に取り付けるアイテム
警音を鳴らすベル。
道路交通法や地方自治体条例により取り付けが”義務化”されています。
前方を照らすライト。
道路交通法第52条で『夜間、道路を通行するときは、灯火をつけなければならない』と定められています。
後方からの視認性を高めるためのライト。
夜間の道路、トンネル内、濃霧の中など、50m先まで明瞭に見通せない暗い場所を走るときは、反射板または『尾灯(テールライト)』が必要となります。
この3点は基本的に”必須”といえます。必ず取り付けるようにしましょう。
詳しい説明は過去記事をご参照ください。
身につける装備
衝撃から頭部を保護するためにかぶるもの。
ヘルメットを身につけることで衝撃が大きく緩和され、致死率をノーヘル時の約半分にまで軽減してくれます。
サイクリングの快適性&安全性を高めてくれる手袋。
これらは自分の身を守り、怪我せずサイクリングを楽しむための装備です。
とくにヘルメットは令和5年4月から道路交通法により着用が努力義務化されているほど重要。命にかかわるものなので、身につけることを強くおすすめします。
詳しい説明は過去記事をご参照ください。
サイクリングに持参すべきアイテム
おさらいが長くなりましたがここから本番。
サイクリングに”持参した方がいいアイテム”を紹介していきます。
②スマートフォン
③デジタルカメラ
④パンク修理道具
⑤アーレンキー
⑥鍵
僕はこの6つを基本的には必ず持参するようにしています。
なかには、「当たり前でしょ!」と思うようなアイテムも含まれますが、経験を踏まえて話していきますのでお付き合いください。
現金
いわずもがな、現金は必須でしょう。
お腹がすいたりのどが渇いたりしたら、補給食やドリンクを買うことができます。我慢していると”ハンガーノック(エネルギー切れ)”や”脱水症”になるおそれがあるので大切。
また、重要なアイテムを忘れてしまったり、急に寒くなって防寒具が欲しくなったり、万が一の緊急事態に出くわしてもお金がすべてを解決してくれます。
お金を持つ最大のメリットは”急なアクシデントでもおおむね対応できる”ことです。
体力が尽きた。
自転車が故障して走行不能になった。
なんでもいいので、歩いて帰るのが不可能な距離で立ち往生したと想像してみてください。
こんなとき、お金さえあれば駅まで移動して『輪行』できますし、余裕があれば自転車を積載できるタクシーを呼ぶことも可能です。
昨今、現金を必要としない”キャッシュレス決済”が普及しており、スマートフォン1台で支払いを完結することができます。
便利なうえに荷物を軽減できるというメリットはありますが、反面、バッテリー切れや突然の雨による漏水・故障などで使えなくなることも考えられます。
そのような事態を考慮して、アナログになりつつあるのかもしれませんが、ある程度の”現金”は持参した方がいいでしょう。
スマートフォン
現代人の必須アイテム。このご時世、持ち歩かない人の方が少ないですよね。
緊急連絡をおこなえる”電話”としての機能はもちろんですが、先に挙げたようにキャッシュレス決済ができたり、カメラで写真や動画を撮影できるのもありがたい。
サイクリング中の調べもの、旅先での宿の確保など、さまざまな方面で活躍してくれます。
とくに自分の現在地がわかる”地図アプリ”は非常に優秀です。
目的地までのルートを選定、道に迷っても瞬時に迂回路を検索してくれるなど知らない土地を走るうえで”必須アイテム”と呼べるくらいサイクリングに貢献してくれます。
デジタルカメラ
走った景色を写真におさめるのも、サイクリングの楽しみのひとつ。
写真を見て振り返ると、そのときの光景だけではなく心情まで鮮やかに思い出すことができるので記憶に残す意味でもおすすめです。
僕は写真撮影のために”デジカメ”を持参しています。
愛用しているのはNikonの『COOLPIX W300』です。防水性、防塵性、耐衝撃性、耐寒性を有したアウトドアに適したカメラ。
近場のサイクリングならスマートフォンのカメラでも十分なのですが、ロングライドや自転車旅など長時間に渡り走るときは、緊急時にそなえてバッテリーを温存しておきたいもの。
そのため、写真撮影はデジカメに分担するのが僕のスタイル。
紐で”たすき掛け”にしておくと取り出し不要で使えるので、撮影がめんどうにならないというメリットがあります。
パンク修理道具
自転車は快適な乗り物ですが、パンクをしてしまうと一発で自走不能になってしまいます。
そのため長距離や遠方を走るときはもちろん、普段のサイクリングから”パンク修理道具”を一式で持参した方が安心です。
てこの原理を使って、ホイールからタイヤを外すための道具。
3本1セットで販売していることが多いですが、感覚的には2本あれば十分です。
携帯用の空気入れ。
小さいものは軽量ですが1回のストロークで入る空気の量が少ない。大きいものは重くかさばりますが、たくさんの空気を入れられたり、空気圧ゲージが付いているものもあります。
好みのものを選びましょう。
タイヤとホイールの間にあり、実際に空気が入るところがチューブ。
最低1本、ロングライドや自転車旅なら2本くらい持っておくと安心ですね。
チューブに空いた穴をふさぐための強粘着シールです。
パナレーサーの『イージーパッチ』はゴム糊やハンマーなどの道具が不要。
穴が開いているところに付属のやすりをかけ、貼り付けるだけ。とってもお手軽。
予備チューブがなくなったときに活躍しますが、あくまで”応急処置”です。
穴の大きさ、開き方によっては空気が漏れ出てしまうので過信は禁物。注意が必要です。
この4点があれば、パンクが原因で自走不能になることはまずありません。
走る距離が長くなるほどパンクする確率は高くなりますが、タイヤに適正量の空気が入っている状態で気をつけながら走ったとしても、パンクする・しないは”運”が影響します。
街中だったらなんとかなるかもしれませんが、人気のない田舎道や山道でパンクしたら目も当てられません。
サドルバッグやツールボックスに入れて、必ず持参するようにしましょう。
アーレンキー
自転車業界では”六角レンチ”のことをアーレンキーと呼びます。
普段はあまり使う機会がなく、僕も過去に使用したのは片手で数えるほどです。しかし、その数回が重要でした。
クロスバイクで自転車旅をしているとき、なにかの拍子でブレーキシューと呼ばれるゴムとホイールが接触してしまい、手でグイグイ動かそうとしても元も戻りません。
そのときに活躍したのがこの道具。
自転車の多くのパーツは、このアーレンキーがあれば”締める・ゆるめる”ことができます。使用頻度は多くありませんが、非常時に備えて持っておくといいでしょう。
鍵
サイクリング先での”盗難防止対策”として、鍵は必須アイテムといえます。
もちろん出発してから自宅に帰るまで、片時も自転車から離れないのであれば不要です。しかし、そんな状況あまりないですよね。
補給食やドリンクを買うためにコンビニに立ち寄ったり、ご飯を食べるためにお店に入ったり、トイレ休憩をしたり、鍵が必要になる場面は短い距離を走るときでもままあることです。
当然ですが、頑丈になるほど重くなる鍵。
自転車の”価格”と”目を離す時間”を考慮して、どの程度の性能が必要なのか吟味が必要です。
乗車前の車体点検・安全チェック
サイクリングをはじめる前に、「自転車に異常がないか?」をチェックをしましょう。
難しいことではありませんし、習慣になれば手間とも感じないほどのものです。
車体点検には『ブタハシャベル(豚はしゃべる)』という標語があります。
非常に覚えやすいですね。
②『タ』……タイヤ
③『ハ』……ハンドル
④『シャ』……車体
⑤『ベル』……ベル
安全に走るため、無事に出かけて・帰ってくるためにも頭に入れて実践しましょう。
それでは、どのようにチェックすればいいのか?標語に沿って説明していきます。
ブレーキの動作・効き具合
両方のブレーキレバーを握り、きちんと動作するか?そのまま自転車を前後に動かしてみて、しっかり止まるか?利きが甘くないか?確認しましょう。
普通に乗って入れば壊れる可能性の低い部分ですが、以下のような状況では注意が必要。
サイクリングをしていると、急な雨に見舞われることがあります。
雨の中を走ったときは、普段よりもブレーキの点検に気を遣うようにしましょう。
ブレーキにもいろいろ種類はありますが、仕組みは基本的に同じです。
簡単にいうと、回っているホイールを『ブレーキシュー』または『ブレーキパッド』と呼ばれるゴム製パーツで挟み込み、回転を止めるというもの。
制動の肝は、この”ゴム”なのです。
しかし、雨の中を走ると、雨水と砂ぼこりが包丁を研ぐときの”水と砥石”のような関係になってしまい、平常時よりもガリガリとゴムが削れてしまいます。
ゴムが摩耗しデコボコしている山が減ってしまうと、当然ですが制動力は落ちます。
雨天ライドをしたあとは、ブレーキをかけたときに異音がしないか?ゴムがすり減っていないか?このあたりも注意深く確認してみるといいでしょう。
もしも異常を感じた場合はすぐさま対処!自分で直せなければ、素直にお店に持参です。
自転車を専用の袋に入れて、公共交通機関を利用することを『輪行(りんこう)』といいます。
輪行直後は、とくにしっかりとブレーキ点検することを強くお勧めします。
タイヤを外すためには”ブレーキの解放”をしなければなりません。
解放すると、クロスバイクの『Vブレーキ』は動作しなくなり、ロードバイクの『キャリパーブレーキ』は動きはするもののほとんど利かなくなります。
自転車を輪行袋から取り出しタイヤをつけました。そのときに、解放したブレーキを元に戻すのを忘れてしまったら?
止まることができず、どこかに突っ込んでしまうでしょう。
想像するだけでゾッとしますよね。
走り出して、スピードが乗ってからでは時すでに遅し。大事故につながり、自分だけではなく他の人にまで怪我をさせてしまう危険性があります。
忘れないよう真っ先にチェックしましょう。
タイヤの空気圧・状態
タイヤの空気は自転車に乗らないときでも、自然と抜けていくものです。
サイクリングに出かける前の車体点検として、必ずタイヤに”適正な量の空気”が入っているかを確認するようにしましょう。
空気が入りすぎていたり、逆に足りない場合は次のような不具合がが起きます。
●自転車が跳ねてしまい走りにくい。
●タイヤがバースト(破裂)してしまう危険性がある。
●タイヤが潰れて摩擦が生まれ走行性能が落ちる。
●段差に乗り上げたとき、異物を踏んだときにパンクしやすくなる。
どちらの場合も”快適なサイクリング”から離れてしまうので要注意。
空気圧の”適正値”はタイヤの側面に表記されています。
適正値の範囲内でおさまるように空気を入れるためには、やはり”空気圧ゲージ”付きの空気入れは必須といえるでしょう。
ヨーロッパで多用される『bar』と、アメリカで多用される『PSI』という2種類の単位が使われていますが、どちらか一方、自分になじむ方を見れば大丈夫。
空気圧が確認できたら、次はタイヤ全体に異常がないかを見回してください。
とがった石やガラス片が刺さっていないか?タイヤを回したとき、どこにも干渉せずスムーズに回転するか?このあたりを確認します。
タイヤは自転車の中で唯一”地面と接触するパーツ”です。
そのため、走行における快適性のみならず安全面にも大きく関係してくる重要な部分。しっかり点検しましょう。
ハンドルの曲がりと機材
当然ですが、ハンドルが曲がっていたら直進することができません。
簡単に曲がったり、ゆがんだりする部分ではありませんが、走行中に転んだり、自転車を倒してしまったときなどは注意して見るようにしましょう。
また、クロスバイクやロードバイクのハンドル回りには、フロントライト、サイクルコンピューターなどの機材を取りつけている人も多くいると思います。
それらがしっかり動作するかも一緒に確認しておくと一石二鳥ですね。
車体に異常・異音はないか
車体に異常はないか?自転車をひと回り確認してみましょう。
目に見えるものならわかりやすいのですが、そうでない異常もあります。
自転車から妙な音、今まで聞いたことのない音は出ていないか?異音に耳を澄ませるのも、大切な車体点検です。
点検方法としては、自転車を持ち上げてブラブラとゆさぶってみる。そのまま10cmくらいの高さから地面に落としてみる。
タイヤ、取り付けているパーツ、ネジやボルトにゆるみがあれば、どこからか”カタカタ”とか”カチャ”というような普段はしない音がするはずです。
単純な”ゆるみ”だったら工具で締めれば改善するでしょう。
異音の出どころがわからない場合は、ショップに持ち込むことをおすすめします。
原因を探り、改善まで対処するというのはかなり難しく、専門の知識が工具が必要となる場合もありますからね。
ベルが壊れていないか
道路交通法により、警音器(ベル)の取り付けが義務化されています。
ただ付いているだけではなく、しっかりと音が鳴るかも念のため点検しておきましょう。
ただし、むやみにベルを鳴らしたり、歩行者に向けてベルを鳴らす行為は道路交通法第54条の違反となるので注意してください。
ベルを鳴らしていい場所・目的は、下記の2点のみです。
②危険を防止するためにやむを得ない場合
②は、ベルを鳴らすことでしか危険や交通事故を防止・回避できない場合にはやむを得ず鳴らしてもよい……ということです。
なかなか判断が難しいですが、とにかくベルは常に音が出る状態で取り付けておきましょう。
おわりに
安全に走り、無事に帰ってくるためには事前の準備は欠かせません。
そんなわけで今回は『持参すべきアイテム』と『乗車前の車体点検』について、お話しさせていただきました。
もちろん、持参した方が安心するアイテムや道具は人それぞれです。
もっとスポーティーなサイクリングをめざしているのであれば、荷物は極力減らしたいでしょうし、そうなるとスマホで代用できるデジカメは不要です。
逆に景色を楽しみたいのであれば、重くなっても一眼レフカメラを担いでいくのがその人の正解になります。
最低限のポイントをおさえて、自分なりに考えてみてください。
そして、車体点検。
難しそうに感じるかもしれませんがそんなことはありません。慣れてしまえば、手間を感じず自然にこなせると思います。
ここでの安全チェックは、サイクリングの”快適性”に直結します。
空気が甘いタイヤではスイスイ走ることができませんし、パンクの不安を抱えることにもなります。
そんなことではせっかくのスポーツ自転車が泣いてしまいますよね。
全サイクリストの願い。
「安全に、楽しく走りたい!」
そこに向けた行動でしたら、めんどうとも思わないはずです。
必要となるアイテムを選び、車体点検をしっかりとおこなって、楽しく、ストレスフリーな自転車ライフを満喫していきましょう!
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