2021年9月。夏の暑さも薄れつつある今日この頃。
分割でのチャレンジにはなったものの、今度こそ千葉県を”一本の線”でつなぐ。そして、無事に『チバイチ』を成し遂げる!
サイクリストにとって…というか、僕にとってかな?どこかを”一周”するっていうのは、すごくワクワクすることなんですよね。
わかりやすい達成感を得ることができますし、その場所を深く知ることができる気がします。
とくに、今回の自転車旅は『自分が住む千葉県を一周する』というもの。前回はリタイアしてしまいましたが、どんな形であれ走り切らないと終わらない。終われない。
そんな意気込みを胸に秘め、出発の地である蘇我駅にやってきました。
~前回のライドはこちら~
夜に音声配信アプリ『stand.fm』で旅の備忘録を兼ねて、ライブ配信をおこないました。
リアルな体験談を話していますので、ぜひご視聴ください。
チバイチ始動!ロードバイクで房総を駆ける
思わぬトラブルに見舞われながら、なんとか無事に出発地点である千葉市の『蘇我駅』に到着しました。まったく焦ったぜ。
線路を越えた先にある駅ビルの壁面には、プロサッカークラブ『ジェフユナイテッド市原・千葉』の文字が大きく描かれています。
そういえば電車輪行で来たときも、駅構内や周辺にポスターやらのぼり旗が立ってたっけ。
時刻は8時ちょうど。
空を見上げると輝く太陽。誰がどう見ても、絶好のサイクリング日和です。
今日のライドをおさらいしておきましょう。
チーバくんの喉あたりに位置する蘇我駅を出発して、千葉県を反時計回りに走っていきます。胸の市原市、お腹の袖ヶ浦市、木更津市、おへその君津市、富津市を抜けていきます。
そのまま足の方に降りてきて、膝の鋸南町、足首の館山市、つま先をぐるりと回り、かかとにある南房総市の宿が目的地です。
個人的には、千葉県のマスコットキャラクター『チーバくん』で例えるとわかりやすい…と思うのですが、他県の人からしたらどうなんだろう?
なんとなくイメージしてもらえれば、とりあえず幸いです。
Googleマップでサクっと調べた走行距離は約135kmでした。
見通しの甘い僕の自転車旅では、予期せぬことが起こり想定よりも距離が延びる…なんてことはザラにあります。
しかし、今回のライドではあまり心配ないでしょう。
大きな道路を使えば道に迷うことも少ないですし、なにより千葉県一周はフラットな道が続いているので、ヒルクライムに苦しめられることもありません。
それでは、出発!まずは蘇我駅のすぐそばに通っている『国道357号』に合流しました。
基本的には、この大通りをひたすら走っていくことになります。
県庁所在地である千葉市は、千葉県でもっとも栄えている都市。住宅やお店が立ち並び、2車線の国道には多くの車が行き来しています。
大型トラックもビュンビュン走っていて、自転車で走るには少し怖い車道。身の危険を感じたので、ここは大事を取って歩道を通行させていただきます。
信号待ちで止まったところに、国道357号の起点がありました。
短い区間だったが、ありがとう!ここから先は『国道16号』ですね。僕の生まれ育った町にも国道16号が通っていたので、懐かしい響きを感じます。
朝の遅れを取り戻すために、自分としては速いペースでサクサク通過。
市街地や工業地帯では、足を止めて撮影したくなるようなスポットが少ないですからね。
逆に心の琴線に触れた景色があらわれたときは、どんなにスピードが出ていたとしても立ち止まりカメラを構えます。
唐突にあらわれる一筋の川。なんだかいいですね。雄大に流れる一級河川も好きですが、町との距離が近く生活に密着しているような川も好き。
雲が広がる空に少しだけ不安を抱えていましたが、また青空が見えてきた!
素晴らしい!
前回のチバイチでは、房総半島を時計回りで走りましたが、とにかく向かい風が強かった。今はありがたいことに無風。スイスイと進むことができます。
市原市を抜けて、袖ヶ浦市に入ったところ。
めちゃくちゃ走りやすい区間に突入。
相変わらず交通量は多いですが、これだけ路側帯が広く設けられていれば怖いものはありません。力のかぎりペダルを回していきましょう。
自転車旅をする中で、最近とくに思うのは『メリハリが大切』ということ。
はじめての土地を長きにわたり進む自転車旅において、「目に映るすべてを余すことなく眺めたい!感じたい!」という欲求は当然あります。
しかし、そんな走り方をしていては、僕のような貧脚は時間がいくらあっても足りません。
走るところはかっ飛ばす!景色を眺めたいところでは、ゆっくり走る!そんな風にメリハリをつけることで、時間に余裕を持った自転車旅が楽しめるでしょう。
実践できているか?
なかなか思うようにはいきませんが、意識はしています。意識は…。
千葉県ナンバー2の川
広がる空には薄い雲が伸びています。
遠くに見えるのは、袖ヶ浦の市街地かな?
そこから2kmほど進んで街に下りると、国道409号が交わる大きな交差点にぶつかりました。
こういう交差点って最初から車道にいれば勢いで通れちゃうんですが、歩道からは合流しにくいんですよね。車の流れもありますし、直前だとなおさらです。
素直に歩道橋を渡ることにしました。
SPD-SLシューズは歩きにくいことで有名ですが、階段の上り下りはその比ではありません。幸い、階段の真ん中に自転車用のスロープが設置されていたのでよかった。
これがあるだけで、とても助かります。
歩道橋を利用して交差点の対岸に出ると、そこには整備されていない野ざらしの道。
無理に突き進んでいたら草がロードバイクに絡まり、ぐらついてしまいました。自然の力、直物のパワー恐るべし。
目線の先には、市と市の境を示す看板。どうやら、あそこから『木更津市』のようですね。
出発から1時間半が経ち、時刻は9時30分。走行距離は約28kmです。
最初の立ち寄りスポットとして、富津市の『富津岬』に向かっています。ちょうどチーバくんのおへそに、なにやら見応えのある展望台がそうなんですよね。
蘇我駅からの距離はちょうど50km。とりあえず、そこまでは強気にペダルを回し、ガンガン走っていこうと思っています。
木更津市に入ると、すぐに大きな川を渡ることになりました。
東京湾に流れ込む二級河川『小櫃川』です。なんて読むんだろう?
調べてみると『おびつがわ』と読むそうです。炊いたお米を入れる”おひつ”もこの漢字を使うみたいですが、知らないと絶対にわからない。
水源から河口までの距離は88kmとのことで、千葉県内では利根川の次に長い川。こんなところでナンバー2に出会えるとは!よく眺めておこう。
小櫃川を過ぎると、青い案内標識に『富津岬』の文字が見えてきました。
自転車旅をしていて、嬉しい瞬間のひとつです。
標識に促されるままに国道16号を爆走!…したいところのに、妙に赤信号に引っかかる。タイミングが悪い日ってありますが、それが今日なのか?
「まーた、赤信号に引っかかった!」
ため息交じりの信号待ち。なかなか”青”に変わらないので周囲をグルグル見回していると、交差点を右折した先に青い案内標識を発見しました。
目を凝らすと、そこには『富津岬』の三文字。
あぶない!ここを右折するんだったか!信号待ちがなければ、完全にスルーしていたぜ。
利用するのは変わらず国道16号。富津岬まであと14kmと、射程圏内にとらえました。
それにしても、どうやって上るんだろう?
ほんの少し右往左往しましたが、無事に上る道を発見。
なかなかの急勾配に加えて、道幅も狭い。運悪く対向車がやってきたら、ビンディングペダルの僕はおそらく立ちゴケ…だけでは済まず、この坂道を転がり落ちることになるでしょう。
『君子は危うきに近寄らず』
無理せず、ロードバイクから降りて、歩くことにします。
意外と走りやすい東京湾側エリア
道なりに左折していくと、見晴らしのいい直線道路に出ました。
最初は、「車通りも多そうだし、怖そうな道だな…」なんて思いましたが、実際に走ってみると素晴らしい道でした。
広い路側帯が確保されていますし、このときは交通量もさほど多くなかったので安心して走ることができます。
ぐいぐいとペダルを踏んでいけるいい道ですね。
快適に走れる要因のひとつに”追い風”がありました。まさかとは思いましたが、背中を押してくれるように微風が吹いています。
サイクリングをしていると、圧倒的に”向かい風”に苦しめられる機会の方が多い気がします。
前に進むことで自らが空気の壁を生み出しているため、そう感じるのかな?不思議なものです。とにかく、風のあと押しもあり、本当にラクに走ることができます。
ほんの少しの区間だけ『君津市』に入ります。
こういう道路ではかっ飛ばして時短を狙いたいところ…なのですが、とにかく赤信号に行く手を阻まれます。ある信号機、全部に引っかかってない?
「次こそは青信号を通過してみせる!」
そう息巻いてペダルをグルグル回すものの、タッチの差で”赤”に変わる信号機。
いくら速く走っても結局は信号待ちでチャラにされるため、もの凄く効率の悪い走り方をしている気がする。いや、気だけじゃなく事実か…。
なんだか負けた気がしますが、むしろゆっくり走るようにしよう。ちょうど信号機が”青”になるタイミングで通過できるように、ペースを調整します。
ストレスも溜まらないし体力は温存できるし、一石二鳥ですね。
蘇我駅から国道16号をひたすら進んできましたが『交通量の多い工業地帯なので走りにくい』という情報を受けて、かなり警戒していた区間でした。
「あれ?……これ、むしろ走りやすくない?」
実際に走ってみると印象は一転しました。
前回のチバイチ2日目で走った『銚子市→南房総市』の太平洋側のルートは、交通量が多いうえに道幅が狭く、結構つらかったと記憶しています。
その区間に比べると、確かに大型トラックなんかの工業用自動車が往来はありますが、路側帯はしっかり確保されています。
段差があったりガタガタしていますが、徐行する分にはまったく問題ない歩道も整備されているため、危険なときは車道を避けることもできます。
不確かな情報を心の中で大げさにしてしまい、「いったいどんな過酷な道なんだろう?」と悪い方ばかりに考えていたようです。
ものすごい走りやすいわけではありませんが、警戒するほどでもない。これは嬉しい誤算。やはり、自分の体を使って感じないと本当のところはわからないものですね。
僕は”歴史に学ぶ賢者”ではないなので、これからも自らの経験から学びを得ていこう。
木更津、君津、富津にまたがるストレート道…いや、地図で見ると正確にはゆるく蛇行した道路なのですが、とにかく10kmほど続きました。
そして、いよいよ『富津岬』が近いようです。
富津公園まであと1.5km、その先にお目当ての展望台がある!
気になるバカ最中と国定・富津公園
道路を横断し、富津公園に向かおうとする矢先、なにやら看板が目に入ります。
「バカ…?誰がバカじゃー!」
そんな怒りを覚えつつ、よく見ると『富津新定番 バカ最中』と書かれていて、自分に向けられた中傷ではないことに心から安堵。いや、もちろん冗談ですよ。
このバカ最中は『手作り和菓子工房 野口製菓』さんが作り出した富津市の名物お菓子。
モデルになっているのは『バカ貝』と呼ばれる貝。いつも開いている口から、オレンジ色の斧足(筋肉の足)を出しているのが特徴です。
その姿が”口から舌を出している馬鹿者”に見えることから、バカ貝と呼ばれるようになった…というのが名前の由来のひとつだそうです。
富津市は、そんなバカ貝の全国有数の産地。
そこに目を付けられて作られた『バカ最中』は名前のインパクトも去ることながら、模した見た目が可愛らしく、人気を博しているようです。
斧足、飛び出した舌は”求肥”でできているようですね。とても美味しそうです。
長々とお話しましたが、決して野口製菓さんの回し者というわけではありません。
では、なにが伝えたかったのか?
道端に何気なく置かれた1枚の看板でも、興味を持って調べてみると”その土地のことを深く知るキッカケ”になるということです。
道路でスマートフォンをポチポチ調べている余裕はありませんので、気になったものがあったらカメラで撮影。帰宅してからじっくり検索してみましょう。
走る土地の理解度を高めるというのも、自転車旅の醍醐味なのです。
富津公園の入口までやってきました。
『南房総国定 富津公園』
国定公園とは?
日本の景勝地の中でもとくに傑出した地として、環境大臣に指定された自然公園である国立公園。
その国立公園に準じる指定を受けた自然公園を”国定公園”という。
国が管理する国立公園に対して、国定公園の管理は都道府県がおこなう。
とにかく、国が認めた景観の美しい公園ということですね。
進んでいくと、園内を周回している道路のマップがありました。
短いルートは2.3kmと2.5km、長いルートだと5.6kmもあるようです。これだけ見ても、かなり広い公園だということがわかります。
僕がめざすのは、左側に突出した富津岬。公園に入ってからも2kmくらい走るのか。
公園内を突っ切る道路、両脇には木々が茂っており目に優しい。木漏れ日の中を走るのは、とても心が癒されます。
ここまで来るのに、自分としてはかなり一生懸命にペダルを回してきたので、そこそこに体力を消耗しています。
疲れた。富津岬までの2kmが長く感じる。
1回も休憩していなかったので、到着したらここで休むとしましょう。南房総市の宿までは、まだまだ距離があるんだ。ここでヘバっていたらたどり着けないぞ!
明治百年記念展望塔とロードバイク
そして、出発から2時間45分。ちょうど50kmを走り切り、最初の目的地に到着しました!
『明治百年記念展望塔』
ここに来たかった!明治100年を記念して建てられた”五葉松”を模した展望塔。
画像検索して見比べてみると、「確かに五葉松っぽいな」と感じるものの、パッと見はかなり奇妙な形をしています。
白い塗装が施されていますが、中心部の鉄骨だけなぜか”錆”で茶色くなっている。なんとなく、「あえて塗装しない、深い理由があるんだろう」と解釈します。
遠目からで十分に見応えがあるため、しばらくぼーっと眺めます。
よし、そろそろ上るか!
外観に負けず劣らず、中もすごい。
階段や踊り場が奇妙に連なり、迷路のようになっています。SPD-SLシューズは階段が大の苦手なので、手すりを握って一歩一歩慎重に上がっていこう。
展望塔には、普通の観光客やバズーカ砲のようなカメラを構えた人、折りたたみ式の椅子に座りながら空を眺めている老夫婦など、さまざまな人たちが楽しんでいました。
なんだかいいですね。
僕は観光地や名所にいったとき、人が多い方が気持ちが盛り上がるタイプなんです。
最上部まで上ってみると、目の前に広がるのは青い空と海!
東京湾。前方に見えるのは三浦半島です。
こうして見ていると、なんだか東京湾一周・通称『ワンイチ』に挑戦したくなりますね。
海を渡るためにフェリーの利用が必要になりますが、ぐるりと入ると一周は約200km。僕のレベルではかなり厳しいライドになりそうな、確かな予感がします。
しかし、三浦半島ライドは経験がありますし、今回で房総半島の東京湾側も走ります。
そう考えるとワンイチの大部分は走行経験があるということ。距離は長くても、これは大きなアドバンテージ!いける!
次なる野望を胸に秘め、振り返ってみるとこれまた素晴らしい景色です。
房総半島から、ズイっと突き出た富津岬が一望できました。
チーバくんのおへそ、その先端にいると思うとなんだか不思議な気分です。
高い位置から見渡すと、大きな竿を持った釣り人、風をはらんだ凧に引っ張られながら水上を疾走するマリンスポーツ”カイトボード”を楽しんでいる人たちがいます。
自転車の姿がないのは残念。
唯一のサイクリストとして、全力で楽しみながら自転車の魅力を富津岬にアピールしていこう!
展望塔を下りている最中に、例の錆びた鉄骨を発見。
なんでここだけ錆びているんだろう?他とは材質が違うのかな?
しかし、なんというか”武骨な鉄のかたまり”という感じで、なんだかロマンを感じます。これは、一時期流行った”工場萌え”に近い感覚なのだろうか。
そんなこんなで、ロードバイクと合流。最後に記念撮影をしておこう。
うん、いいアングルで撮れました。
これで思い残すことはありません。次なる目的地である『洲崎灯台』に向かいましょう!
その前に少し休憩。
富津公園の大きな駐車場の前に、自動販売機と朽ちかけたベンチがあったので立ち寄ります。
ここまで走りっぱなしだったので、エネルギーが必要だ。
普段は飲まないメロンソーダを思い切って購入したところ、これがおいしい。懐かしい味にノスタルジーを覚えます。
視界の端に動くものを捉えたので顔を向けてみると、猫ちゃんがウロウロしていました。
茶色ではなくベージュ、黒ではなく淡いグレーと優しい色使いでまとめられた毛並み。人懐っこい性格で、物怖じすることなく近寄ってきてくれます。
かわいいですね。もう、猫は本当に最高です。
癒されながら、今日の行程を改めて考えてみます。
走行計画では135kmの道のり。今はちょうど50kmを走破したところです。苦手ですが引き算をしてみると、残りの距離は約85kmですね。
まだまだ結構あるな!
時計を見てみると、時刻は11時20分。あれ、まだ午前中か。充実していたせいか、もっと時間が経っているように錯覚していました。
これだけあれば、暗くなる前に南房総市の宿にたどり着けるかな?
もうひと踏ん張りがんばりますか!改めて、ロードバイクにまたがりペダルを回していきます。
次回、1日目の後編をお楽しみください!
~次回のライドはこちら~
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